持続可能な開発目標(SDGs)という言葉をご存知でしょうか。SDGsとは、企業が環境問題や社会問題の解決に取り組み、持続可能な社会の実現を目指す活動を意味します。
印刷業界でも、SDGsを推進するためにさまざまな取り組みが行われてきました。環境にやさしい印刷物を製作することで、発注した企業も間接的にSDGsに貢献できます。
本記事では、環境に配慮した印刷物が求められる理由や、SDGsに貢献する印刷業界の取り組み、環境にやさしい印刷物の効果などを詳しく解説します。
目次
環境に配慮した印刷物が求められる理由
今、環境にやさしい印刷物がなぜ求められているのでしょうか。その理由の一つが、2015年9月の国連サミットで採択されたSDGs(Sustainable Development Goals)です。
SDGsとは、日本語で「持続可能な開発目標」と言い、人間が人間らしく暮らせる持続可能な社会の実現に向けて、2030年までに達成すべき17のゴールを定めたものです(※1)。SDGsの採択以降、企業は気候変動、生物多様性の損失、貧困や格差、紛争や人権侵害といった課題の解決に向けて、さまざまな取り組みを行ってきました。
身の回りで使われている印刷物も、実は環境問題と大きな関わりがあります。例えば、印刷に使用されるインクの中には、大気を汚染する可能性のある揮発性有機化合物(VOC)が含まれています。こうしたインクを環境にやさしいインクに置き換えれば、自然環境への影響を抑えることが可能です。
印刷業界では、主に以下のSDGsのゴールをターゲットとしています(※2)。
SDGsのゴール | 内容 |
---|---|
目標12(つくる責任、つかう責任) | 持続可能な生産消費形態を確保する |
目標13(気候変動に具体的な対策を) | 気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる |
目標15(陸の豊かさも守ろう) | 陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する |
SDGsに関心がある方は、自然環境の保護に取り組む印刷会社を選び、今よりももっと環境にやさしい印刷物を制作してください。
(※1)環境省:持続可能な開発目標(SDGs)について P1
(※2)環境省:持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド[第2版](本編) P10
SDGsに貢献する印刷業界の取り組み
SDGsに貢献するため、印刷業界では以下のような取り組みを行ってきました。
- ユニバーサルデザイン
- エコフレンドリーな素材の選定
- 生産過程でのCO2排出削減
- 環境負荷の低い輸送手段の選定
それぞれの取り組み内容を詳しく解説します。
ユニバーサルデザイン
印刷業界は、人にやさしい印刷を目指し、ユニバーサルデザインの普及に取り組んできました。ユニバーサルデザインとは、印刷物などのデザインを視覚障がい者や高齢者の方でも見やすくし、誰でも安心して利用できるようにしたものです。
SDGsのゴールは、環境問題に関わるものだけではありません。SDGsは、「誰一人取り残さない」社会の実現を基本理念としています。例えば、SDGsのゴールの中には、以下のように社会問題に関わるものもあります(※3)。
SDGsのゴール | 内容 |
---|---|
目標4(質の高い教育をみんなに) | すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する |
目標10(人や国の不平等をなくそう) | 各国内及び各国間の不平等を是正する |
目標11(住み続けられるまちづくりを) | 包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する |
すべての人にとって公平なユニバーサルデザインを印刷物に取り入れることで、こうしたSDGsのゴールに貢献できます。
(※3)環境省:持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド[第2版](本編) P15
<エコフレンドリーな素材の選定>
印刷業界は環境負荷を減らすため、紙やインクの素材を見直し、エコフレンドリーなものを積極的に活用してきました。
例えば、紙は製造過程で森林資源を消費します。将来の世代のため、森林資源を維持するためには、紙の製造過程で森林を適切に管理し、必要以上に伐採しないようにしなければなりません。
そうした課題をクリアした紙の一例がFSC®認証紙です。
FSC®認証紙とは、国際的な森林認証制度であるFSC®認証で定めた規格に従い、適切に管理されていると認められた森林から生産された木材や、その他適切な森林資源の使用につながる原材料を使用して生産された紙のことです。
FSC®認証紙は、森林の伐採だけでなく、その後の製造、加工、流通のプロセスでも厳しい基準を満たす必要があります。
印刷物の発注に当たって、こうしたエコフレンドリーな紙を積極的に利用することで、間接的にSDGsに貢献できます。
FSC®C028818
生産過程でのCO2排出削減
また印刷業界は、印刷物の発注から納品の過程で、全体としてCO2排出量を減らすための取り組みを行ってきました。CO2排出削減に向けた取り組みは、印刷会社によって差があるため、環境意識が高い印刷会社かどうかを見分けることが大切です。
その一つの基準として、日本印刷産業連合会(日印産連)が制定したグリーンプリンティング認定制度(GP認定制度)があります。グリーンプリンティング認定制度は、日本印刷産業連合会による書類審査や現地調査を通じて、環境に配慮した印刷に取り組む印刷会社を認定する制度です。
CO2排出削減に取り組む印刷会社をお探しなら、グリーンプリンティング認定制度を取得した企業に発注しましょう。
環境負荷の低い輸送手段の選定
印刷物を発注すると、まず印刷工場で印刷・加工・製本され、その後納品先に輸送されます。印刷業界では、この輸送過程におけるCO2排出量に着目し、環境負荷の低い輸送手段への切り替えに向けて取り組んできました。
例えば、環境負荷の低い輸送手段の一例として、トラック輸送から鉄道・船舶による輸送に切り替えるモーダルシフトや、他の事業者と物流を一本化し、トラックの積載率を向上させる共同配送などが挙げられます。また印刷物の梱包も、使い捨てではなくリサイクル可能な素材を利用することで、廃棄物の削減につながります。
印刷工程だけでなく、サプライチェーン全体でのCO2排出量にも着目しましょう。
環境に配慮した印刷物の効果
環境にやさしい印刷物を制作することで、以下のような効果が期待できます。
- 自然環境へのネガティブな影響を抑制できる
- カーボンニュートラルを実現できる
- 新たなビジネスチャンスの獲得につながる
- 企業価値やブランド力の向上につながる
環境に配慮した印刷のメリットは、自然環境へのネガティブな影響を抑え、持続可能な社会の実現に貢献できる点だけではありません。SDGsに取り組む姿勢が企業価値を向上させ、新たなビジネスチャンスの獲得につながる可能性があります。
自然環境へのネガティブな影響を抑制できる
一つ目のメリットは、自然環境へのネガティブな影響を抑制できるという点です。
- 紙の原料となる森林資源の保全につながる
- インクに含まれる有害物質の流出を抑制できる
- 印刷工程や輸送過程のCO2排出量を削減できる
- 印刷工程や輸送過程で生じる廃棄物を削減できる
従来の印刷物から、環境に配慮した印刷物に切り替えて、持続可能な社会の実現に取り組みましょう。
カーボンニュートラルを実現できる
二つ目のメリットは、カーボンニュートラルの実現につながるという点です。
カーボンニュートラルとは、CO2の排出量を実質的にゼロにする取り組みを意味します。「実質的にゼロにする」とは、事業活動におけるCO2排出量をゼロにするという意味ではありません。事業活動におけるCO2排出量と、森林資源などによるCO2吸収量の均衡を保ち、全体としてゼロにする取り組みです。
国は2020年10月に、2050年までにカーボンニュートラルを実現することを宣言しました(※4)。
前述したように、印刷工程や印刷物の輸送過程では、大量のCO2が排出されています。カーボンニュートラルの実現に向けて、CO2排出量の削減に取り組む印刷会社を選びましょう。
(※4)環境省:カーボンニュートラルとは
新たなビジネスチャンスの獲得につながる
三つ目のメリットは、新たなビジネスチャンスの獲得につながるという点です。
国連サミットでSDGsが採択されたことを受け、大手企業を中心に環境負荷の低減に向けた取り組みが始まりました。またさまざまな業界の大手企業が、取引先に対してもSDGsに関連した取り組みを要請しています。こうした流れに対応し、SDGsに向けた取り組みを行うことで、新たな受注先の獲得につながる可能性があります。
またSDGsの理念は、投資家の考え方も変化させました。特に長期的な事業リスクを重視する機関投資家は、企業が環境問題や社会問題の解決に取り組み、持続可能な経営を行っているかどうかを投資判断に組み込んでいます。こうした考えに基づく投資のことをESG投資と言います。
環境にやさしい印刷物を制作し、SDGsに向けた取り組みをアピールすることで、ESG投資を行う投資家の関心を集められるかもしれません。
企業価値やブランド力の向上につながる
四つ目のメリットは、企業価値やブランド力を高められるという点です。
近年、SDGsについて国内外のさまざまなメディアが取り上げるようになりました。また政府は2017年6月にジャパンSDGsアワードを創設して、SDGsの実現に向けて取り組む企業を表彰し、企業名や取り組み内容の公表を行っています(※5)。
こうした背景によって、SDGsに関連した取り組みは国内外からの関心を集め、企業価値やブランド力の向上につながるようになりました。日本印刷産業連合会は、SDGsに取り組むメリットの一つとして、SDGsの理念に共感する社員のモチベーションアップや、求職者の関心の高まりなどのポイントも挙げています(※6)。
SDGsは企業活動にとってもメリットが大きいという視点に立ち、環境に配慮した印刷物を制作しましょう。
(※5)外務省:ジャパンSDGsアワードとは
(※6)日本印刷産業連合会:SDGs に取り組むメリット・効果
企業活動における取り組み
ここまで説明してきたように、環境にやさしい印刷物を制作することで、企業活動にとってさまざまなメリットがあります。
印刷物を発注する際に、以下のポイントを意識するようにしましょう。
- 印刷物を企画する段階で、SDGsや環境問題についての視点を持つ
- 印刷物の用紙には、環境負荷が低いエコフレンドリーなものを選ぶ
- 印刷工程のCO2排出量に着目し、排出量削減に取り組む印刷会社を選ぶ
- 印刷物の輸送過程のCO2排出量に着目し、環境にやさしい梱包や配送を行っている印刷会社を選ぶ
- 印刷物のデザインにSDGsに関連したメッセージを取り入れる
SDGsに向けた取り組みは、将来の経営リスクを解消したり、新たなビジネスチャンスの獲得につながったりと、企業にとっても大きなメリットがあります。企業活動としてSDGsを推進していく場合は、まず普段使用している印刷物から見直してみてください。
印刷物とSDGsの関係を知り、環境にやさしい印刷物を制作しよう
ポスターやチラシ、カタログ、パンフレットなど、企業活動で使用している印刷物は、実はSDGsと大きな関わりがあります。例えば、印刷物を発注する際に、より環境にやさしい用紙やインクを使用することで、自然環境への悪影響が抑えられます。
また印刷工程を通じて、どの程度のCO2を排出しているかに着目することも大切です。排出量削減に取り組む印刷会社を選ぶことで、SDGsの目標達成に向けて間接的に貢献できます。
SDGsに貢献したい企業は、環境にやさしい印刷物を制作しましょう。気候変動や生物多様性の損失を防止できるだけでなく、企業価値やブランド力を高め、新たなビジネスチャンスを生み出すことも可能です。
FSC®C028818
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