普段Web上で見ている画面や作成したデザインが思うようなカラーで印刷できないことや、同じデザインなのにWeb上と印刷物とで色合いが違うと感じることはありませんか?
それは、ディスプレイ上と紙面上では色の表現の仕組みが異なるからです。
表現の仕組みがどう異なるのかというと、それぞれRGBとCMYKという方法を使っています。一口に色といっても両者は表せる色の“範囲”が異なるため、Web上で作成したデザインを印刷する際は、色の変換などの処理が必要です。
そこで本記事では、RGBとCMYKの違いや仕組み、それぞれどんなモノが適しているのか、変換方法について解説します。
「Webで作成したデザインを紙面に適した色で印刷したい」
「RGBやCMYKって聞いたことはあるけど改めて理解したい」
「RGBとCMYKの変換方法について知りたい」
上記に当てはまる方や、デザイナー初心者の方は必見です!
目次
RGBとは?
RGBとは加法混色と呼ばれる色の表現方法で、名称は以下の3つの色の頭文字に由来しています。
- R:赤(Red)
- G:緑(Green)
- B:青(Blue)
「光の3原色」とも呼ばれ、上記の色を混ぜれば混ぜるほど白に近づき、明るくなっていく点が特徴です。テレビやパソコンなどのディスプレイ上で見る色はRGBが使われています。
CMYKとは?
CMYKとは減法混色と呼ばれる色の表現方法で、名称は以下の3つ(+1つ)の色の頭文字に由来しています。
- C:シアン(Cyan)
- M:マゼンタ(Magenta)
- Y:イエロー(Yellow)
- K:黒(Key plate)
「印刷物の4原色」とも呼ばれ、上記の色からシアン・マゼンタ・イエローを混ぜれば混ぜるほど黒に近づき、暗くなっていく点が特徴です。ただし、全ての色をまぜても完全な黒になる訳ではありません。そのため、印刷物では上記の3色とは別に黒のインクを使うことで、フルカラー印刷が可能となります。
なお、通常のカラー印刷はCMYKで表現できるものの、金色や銀色などは出すことができません。そのため、“特色”と呼ばれる色を追加して近づけていきますが、全ての色の完璧に表現ができる訳ではない点に注意しましょう。
■関連記事:特色とは?特色印刷とカラー印刷の違い
RGBとCMYKの違い
RGBとCMYKはどちらも色の表現方法であるものの、表現する媒体や基本となる色など、多くの違いがあります。それぞれの違いは以下の通りです。
RGB | CMYK | |
色の構成 | 赤・緑・青 | シアン・マゼンタ・イエロー・黒 |
表現方法 | 加法混色 加法混合 光で表現する | 減法混色 減法混合 インクで表現する |
混ぜた後の色 | 白に近づく | 黒に近づく |
利用シーン | 主にディスプレイ | 主に印刷物 |
RGBとCMYKは表現できる色の領域に違いがあり、RGBの方が多くの色を再現できます。特に、CMYKは明度の高い色の再現が難しい他に、青や青紫がかった色だとぼやけやくすみが出るケースもあります。
このように、Web上で作成したデザインを実際に印刷すると、色に違いが生まれるのはRGBとCMYKが表現できる色の領域が異なるからです。そのため、Web上で作成したデザインを印刷する際は、RGBからCMYKに変換するだけでなく、一度印刷して仕上がりを確認すると、納得のいくものが作りやすいでしょう。
なお、RGBとCMYKは色の表現方法としての違いはあるものの、どちらの表現を使っても、人が色を認識する仕組み自体に違いはありません。
どのくらい色差があるか
RGBとCMYKですが、どれくらい差があるかを比べてみましょう。以下は、あくまでイメージになりますが同じ画像です。左がRGBで、右がCMYKです。これくらいの差をイメージしてください。
どう使い分ければいいのか
RGBとCMYKは色の表現方法が違うことから、適する媒体も異なります。それぞれ、どのように使い分ければよいか、仕組みと合わせて解説します。
RGBが適しているもの
RGBが向いているものは主に、「Webサイトの制作物」や「発色が重要な印刷物」です。
RGBはディスプレイ上で光により色を表現する方法であるため、基本的にテレビやパソコン、スマートフォンなどのディスプレイを通して目にする色はRGBが適しています。なお、制作をする際は、WindowsかMac OSかなど、OSによっても違いが生まれるため注意しましょう。
また、「発色が重要な印刷物」も色域が広いRGBが向いており、その場合はRGB印刷という印刷技術によって発色の良い印刷物を作ることが出来ます。
RGBを利用する代表的なシーンはWeb上でのデザインです。ホームページの作成や販促物・印刷物のデザイン、イラスト制作など種類は問いません。
また色については、Web上では色をプログラムで表現するため16進数カラーコードを使います。16進数カラーコードでは、RGBそれぞれを数値に置き換え、その後16進法で2つの英数に変換し6文字のコードにして表現します。6文字の先頭に「#」をつけると、以下のようにそれぞれ固有の色を表す16進数カラーコードが出来上がります。
現在では1つの色につき256段階の調整ができるため、3色合わせて約16.8万通りと多彩な色の表現を使ってデザインできます。
CMYKが適しているもの
CMYKが向いているものは主に、「印刷物全般」です。
CMYKは印刷物上でインクを使い色を表現する方法です。そのため、ポスターや書籍、写真など、印刷物として目にする色はCMYKがベースとなっています。なお、CMYKはインクで実際に印刷して表現するため、コート紙やマット紙など材質によっても色のイメージが異なる点に注意しましょう。クラフト紙のように紙自体に特有の色があれば、それだけ出来上がりのデザインにも違いが生まれます。
CMYKはそれぞれの値について0〜100%の中で指定し色を表現します。これをプロセスカラーといい、赤なら「C値0・M値80・Y値60・K値0」のように指定して希望の色を出力します。
プロセスカラーは理論上、それぞれ101段階まで調整できるため、4色合わせて1億通りに近い表現が可能です。しかし、現実的にはインクでそれだけの色の差を表すことはできないため、一般的にRGBよりも表現できる色の幅は限られています。 CMYKで表現できない色は、特色インキを使ったスポットカラーで指定します。特に正確なカラーにしたい場合は、DIC(ディック)やPANTONE(パントン)などの色見本からカラー番号を指定して色を決めます。
- DIC:大日本インキ化学工業株式会社の色見本帳の番号。赤であればDIC156などと指定する。
- PANTONE:アメリカPantone社のカラー番号。赤であればPANTONE186などと指定する。
なお、PANTONEは日本のインクを使うと発色が若干異なるため、国内印刷ではDICを使うケースが多いでしょう。
RGBデータでは印刷は出来ない?
あくまで弊社の経験則になりますが、印刷会社のデザイナー以外の方がデータを作成する場合はRGBで作られるケースが多いと感じます。
いざ印刷物を作成するためにデータを受け取ってみたら、RGBデータでしたってこともしばしあります。
もちろんRGBデータでも印刷は可能ですが、一般的な印刷物はCMYKデータを使用します。なので、基本的には印刷会社へのデータ入稿前にCMYK形式に変換する必要があります。
特に、青や緑は劣化する可能性が高く、くすむと印象が大きく変わる色であるため注意が必要です。それを事前に防ぐ意味でも、変換方法も覚えておくと役に立ちます。
【画像付き】RGBとCMYKの変換方法
ここでは「Photoshop」と「illustrator」での変換方法の手順を画像付きで解説します。
【Photoshop】
RGB→CMYKに変換
①画像をPhotoshopで開き、画面左上にあるファイルがRGBかCMYKか確認する。(以下の場合は「RGB」)
②タブの「イメージ」>「モード」を選択すると「RGBカラー」にチェックが入っているので「CMYKカラー」を選択する
③左上のファイルが「CMYK」に変更されていることを確認
上記の3STEPで簡単にRGB→CMYKに変換できました。
なお、上記はRGB→CMYKの変換手順ですが、RGB→CMYKへの変換は上記②で「RGBカラー」を選択するだけで変換できます。
【illustrator】
RGB→CMYKに変換
①画像をillustratorで開き、画面左上にあるファイルがRGBかCMYKか確認する。(以下の場合は「RGB」)
②タブの「ファイル」>「ドキュメントのカラーモード」を選択すると「RGBカラー」にチェックが入っているので「CMYKカラー」を選択する
③左上のファイルが「CMYK」に変更されていることを確認
illustratorでのRGB→CMYKへの変換方法についても、Photoshop同様に上記②で「RGBカラー」を選択するだけで変換できます。
不安な時は「色校正」サービスを使おう
RGBとCMYKは色を表現できる範囲の違いから、実際に印刷するとイメージと違う色合いになってしまうことが多くあります。RGBからCMYKへの変換によりある程度防げるものの完璧ではありません。そのため、RGBで作成したデザインを印刷する際は、「色校正」サービスを使うのがおすすめです。
色校正サービスとは、本番印刷の前に見本を作成・出力することで、デザインと実際の印刷物の差を埋める作業です。色校正を行うことで、色をイメージに近づけられるだけでなく、文字やサイズ感など、印刷物全体の確認にもつながるため、すり直しを防ぐ効果もあります。
なお、パッケージなどを作る場合は組み立て作業まで行い、全体のイメージを確認するケースもあります。
色校正サービスには以下の3つの種類があり、状況や予算に応じて3つの方法から選ぶのが一般的です。
1. 簡易校正
レーザープリンターを使った簡易的な校正方法で、プルーフ出力ともいいます。低コストでスピーディーに色や文字、デザインの確認ができる点がメリットで、細部ではなく全体の雰囲気を確認する際に向いています。 なお、色の仕上がりは本番印刷と異なることも多いため、注意しましょう。
2. 平台校正(本紙校正)
本印刷と同じ用紙や特色インキを使えることが多く、本番に近い色校正が可能です。印刷機は本番と異なり、用紙の枚数なども抑えるため、コストを抑えることも可能です。 本番印刷機を使わないため、印刷環境によっては仕上がりに若干差が生まれるケースもあります。
3. 本機校正
本番と同じ印刷機・用紙・インクを使い仕上がりを確認する方法です。本の場合、製本ができるケースもあります。本番同様の印刷環境のため、他の色校正サービスと比べコストも時間もかかってしまいますが、色や全体の雰囲気の確認はもちろん、正確な色校正が可能となるため、重要な印刷物は本機校正を実施することで思い描いた発色の印刷物を作ることができるでしょう。
一般的には1<2<3と価格は上がる傾向にありますが、枚数やサイズによって異なるケースがあるため、発注先に確認をしましょう。
まとめ
RGBとCMYKはどちらも色の表現方法であるものの、光で画面上に表現するか、インクで紙上に表現するかの違いがあります。
一般的に、RGBの方がCMYKよりも可視的に表現できる色の数が多いため、印刷物にするとイメージとの違いが生まれてしまいます。
なのでもし、Web上で作成したデザインが思うようなカラーで印刷できないときは、RGBとCMYKの違いを理解した上で、印刷する前にRGBからCMYKに変換するとよいでしょう。
なお、変換しても理想の色で印刷できないときは、印刷会社の色校正などのサービスを活用し、実際に印刷して差異を確認するのがおすすめです。