印刷業界には、環境に配慮した取り組みを進めるため、さまざまな認定制度があります。その一つが、日本印刷産業連合会が創設したグリーンプリンティング(グリーンプリンティング認定制度)です。
グリーンプリンティングの基準を満たすと、印刷製品にGPマーク(環境ラベル)を表示できます。印刷製品を利用する企業が、環境問題への関心を対外的にアピールすることができるため、印刷会社以外にもメリットのある制度です。 本記事では、グリーンプリンティング制度の内容や、認定を受けるメリット・デメリット、グリーンプリンティングの具体的な取り組みについて分かりやすく解説します。
目次
グリーンプリンティングとは何か
環境省によると、グリーンプリンティングは「印刷業界の環境自主基準に基づき、事業者(工場等)の環境負荷低減への取組および環境に配慮した印刷製品を認定するという総合認定制度」[注1]を指します。
日本印刷産業連合会が制定したグリーン基準に基づいて、環境にやさしい印刷物や印刷会社を認定するための制度です。
[注1]環境省「グリーンプリンティング認定制度」
グリーンプリンティングの定義と目的
グリーンプリンティングは3つの制度[注2]でできています。
GPの制度 | 内容 |
GP工場認定制度 | 印刷物の製造工程において、環境に配慮している印刷工場を認定する制度 |
GP資機材認定制度 | 環境に配慮している資機材(洗浄剤、エッチ液、印刷版、現像機、セッター、製版薬品、デジタル印刷機など)を認定する制度 |
GP製品認定制度 | 印刷物の製造工程や使用する資材が、総合的に環境に配慮している印刷物を認定する制度 |
グリーンプリンティングの目的は、印刷資材、製造工程、印刷会社の取り組みの全ての観点から、環境への配慮を総合的に進める点にあります。またGPマーク(環境ラベル)を表示することで、環境問題に取り組む印刷会社が社会的な信頼を得られるようにするのも目的の一つです。
グリーンプリンティングは、国連総会で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)とも無関係ではありません。グリーンプリンティングに取り組むと、SDGsのゴールの一つである「持続可能な生産消費形態を確保する」[注2]の実現に貢献できます。
- VOC(揮発性有機化合物)の発生・排出抑制
- 湿し水を使わない水なし印刷の推進
- 省エネ活動の推進
- 古紙のリサイクルやリサイクル製品の使用
- 森林保全に配慮した資材の使用
グリーンプリンティングの基準
グリーンプリンティング制度の認定基準は、日本印刷産業連合会が2001年に制定した「日印産連『印刷サービス』グリーン基準」[注2]です。一度認定を受けても、3年に1回更新が必要なため、グリーン基準に基づいて環境への配慮をつづけていく必要があります[注2]。
[注2]日本印刷産業連合会「制度概要」
グリーンプリンティングのメリットとデメリット
グリーンプリンティング制度の認定を受けると、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。印刷会社の視点から解説します。
環境への影響を最小化するメリット
グリーンプリンティング制度の基準を満たせば、印刷物の製造工程や、印刷に使用される資機材がもたらす環境への影響を最小化できます。
GP認定工場が製造し、基準を満たした製品には、GPマークを表示することが可能です。GPマークの表示によって、環境に配慮した取り組みを行っていることを客観的に証明できます。グリーンプリンティング制度には、対外的な企業イメージの点でもメリットがあります。
コストや制約を考慮するデメリット
一方、印刷工程の環境負荷を軽減する過程で、コストの増大や製品ラインナップの見直しなどの制約が発生する可能性があります。
例えば、環境負荷の低いFSC®認証紙に切り替える場合、通常の紙と多少の価格差があるため、原材料費が高くなるかもしれません。環境対応のコストや制約の面も考慮しつつ、グリーンプリンティング制度への対応を進めていくことが大切です。
グリーンプリンティングの具体的な取り組み
グリーンプリンティングの実現に向けて、印刷会社は以下のような取り組みを行っています。
- 再生紙の利用
- エネルギー効率の向上
- 廃棄物の削減
再生紙の利用
グリーンプリンティング制度では、環境に配慮した紙を使用することが条件の一つになっています。環境に配慮した紙には、先ほど例に挙げたFSC認証紙があります。
この紙は、国際的なNGOであるFSCの責任ある森林管理や加工・流通の規格に則り認証された紙で、適切に管理されたFSC認証林、再生資源および その他の管理された供給源からの原材料で作られている紙です。
エネルギー効率の向上
またグリーンプリンティングの認定を受けるには、印刷工程のエネルギー効率を見直し、省エネに取り組む必要もあります。例えば、印刷工場の空調設定温度を見直したり、工場内の照明を消費電力が少ないLED照明に置き換えたりするといった取り組みが挙げられます。
廃棄物の削減
印刷工程で発生する廃棄物の削減も重要な取り組みの一つです。廃棄物は焼却し、処分する過程で二酸化炭素などの温室効果ガスが発生します。
使用済みのインクを回収し、リサイクルするといった取り組みによって、廃棄物を減らし環境負荷を軽減することが可能です。
グリーンプリンティングの認証や指標
グリーンプリンティング制度の認証を受けると、印刷製品にGPマークを表示することができます。
印刷業界には、GP以外にもさまざまな環境ラベルがありますが、従来のマークは使用する紙やインキ、製造工程の一部のみが対象となっていました。一方、GPマークは「資材から工程までの総合的環境配慮マーク」として位置づけられています。
GPマークを取得すると、使用する資機材、印刷物の製造工程、印刷会社としての取り組みの全てにおいて、環境への配慮を対外的にアピールすることが可能です。
GPマークには、スリースター、ツースター、ワンスターの3つのランクがあり、環境問題への取り組みの度合いがひと目で分かる仕組みになっています[注3]。
GPマークの取得基準
GPマークを表示するには、日本印刷産業連合会のグリーン基準に基づいて、製造の要件、資材の要件の2点を満たす必要があります[注3]。
製造の要件 |
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資材の要件 |
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GPマークの取得基準は、オフセット印刷部門、シール印刷部門、グラビア印刷部門、スクリーン印刷部門など、印刷方式によって変わるため、詳しく知りたい方は日本印刷産業連合会のホームページを確認してください。
まとめ
グリーンプリンティングは、環境に配慮した印刷物や印刷会社を認定するための制度です。日本印刷産業連合会が創設した制度で、環境自主基準の「グリーン基準」に基づいて認定が行われます。
グリーンプリンティングはSDGsとも関係があり、GPマークを取得した製品を利用することで、SDGsのゴールの一つ「持続可能な生産消費形態を確保する」に貢献できます。グリーンプリンティングの仕組みを知って、環境に配慮した製品やサービスを利用しましょう。
FSC®C028818
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