BtoBの販売戦略は、Web環境の進化やSNSの普及などで大きく変化しています。そんな中でマーケティングオートメーション(MA)を導入する企業が増えています。
MA導入の意義を知りたい、自社に役立つなら検討したいという企業も多いでしょう。そこで、本記事ではBtoBにおけるMAの必要性や活用方法、導入時の注意点を解説します。
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MAとは?
マーケティングオートメーション(MA)は、自社商品やサービスの宣伝および販売戦略を行うマーケティングや顧客と商談に至るまでのプロセスを、的確で効率よく行うために自動化するツールのことを指します。つまり、購買を期待できる見込み顧客の管理や、案件の獲得、商談成立などを定量的かつ効率的にサポートする仕組みと言うこともできるでしょう。
MAのツールを導入すると、見込み顧客の管理や見込み顧客のWeb上での行動分析、自社の情報発信の効率化や自動配信、顧客が自社にどれくらいの興味を持っているかの数値化、問い合わせフォームなどの作成などが容易になります。
結果として、商談の創出量増加、見込み顧客放置の防止、見込み顧客の購買意欲の定量的把握が可能となりますから、利益向上に大きく貢献します。
MAについて詳しく知りたい方は「マーケティングオートメーション(MA)とは?SFA・CRMとの違いや導入のメリットも紹介」もご覧ください。
BtoBにおける購買の特徴
ここではMAの導入を検討する前に、まずBtoBで行われる購買の特徴を整理します。
購買意思決定にかかる期間がBtoCに比べて長い
BtoCであれば、顧客の意思決定さえ行われれば、すぐに購買行動につながります。しかし、BtoBの場合、「そもそも購買が必要なのか」という検討から始まり、自社の費用対効果の分析、商品やサービスの調査や他製品との比較検討、数社からの見積もり取得とそれぞれの検討、組織内での多数の承認獲得など、非常に多くの手順を踏まなければ商談成立に至りません。
場合によっては購買までに数年の期間を必要とすることも珍しくありません。また、調査だけが行われて実際の購買には至らないこともよくあることです。企業の業務効率化や生産性向上に大きなインパクトをもたらす可能性のあるツール導入には、意思決定に多くの時間を要するのがBtoBの特徴です。
購買に関わる人数がBtoCに比べて多い
企業が何らかの購買行動をとる場合、組織として承認が必要になることが一般的です。
例えば、業務遂行に必要なツールの購入を要求する担当者は、そのツールの必要性や有効性を示したうえで上長に承認を得なければなりません。
購買対象の価格が大きい場合や組織自体が大きいほど、係長、課長、部長という具合に承認を得なければならない相手も増えていくでしょう。
関わる人が多ければ多いほど購買までに多くの時間がかかるのが一般的です。いっぽうでBtoCの場合、関わる人数が少ない場合が多く、複数もの承認プロセスを踏む必要もほぼないので、購買までにさほど時間を要しません。
「衝動買い」がほぼ存在しない
BtoCの場合、「個人的な好み」や「欲しいという気持ち」によって購買行動が左右されることが多い傾向があります。一方、BtoBにおいては、基本的に感情的な要素は排除され、企業としての合理性が要求されます。
また注意すべき点として、組織が大きい場合や購買決定に複数の部署が介在する場合などは、「合理性」も複数存在する可能性があります。ひとつの企業内でも、部署Aと部署Bの合理性が異なることがあるからです。
つまり、BtoCには欲しいときにすぐに購入する「衝動買い」という可能性がありますが、BtoBにおいては、経営者の独断などの特殊な例を除けば「衝動買い」はあり得ません。このため、マーケティング戦略を仕掛ける側としては感情に訴える戦略は有効性が低く、合理性や裏付け等を提示することが求められます。
購買プロセスがBtoCと比べて複雑
企業がなんらかの購買を行う場合、多数のプロセスが存在します。例えば、購買の必要性を提起する、購買する対象を調査する、購買先から見積もりを取ったり価格交渉をしたりする、意思決定者にプレゼンテーションを行う、意思決定を行うといった具合に、分業化されていることが一般的です。
また、ひとつの役割に複数の担当者が介在することも多く、その場合はプロセスがさらに複雑化します。そのため、売る側としては見込み顧客の購買プロセスやキーマンが誰かを把握することも重要です。
BtoBでMAが必要とされる理由
ここからは、BtoBでMAが必要とされる理由を解説します。
見込み顧客に対する中長期的な育成が必要なため
BtoBでは衝動買いはなく、購買行動までに時間がかかります。また、時間をかけて商談を進めていても購買行動自体が消滅したり、競合他社からの購買が決定したりすることもあるでしょう。
それらのリスクを踏まえると、目先の案件だけを追っていても、中長期的な売上や利益の維持・向上は困難です。そのため、見込み顧客を継続的に育成する活動が欠かせません。
見込み顧客の育成手法としては、メールやSNSを利用した情報発信が盛んに行われています。しかし、残念なことに情報発信の回数を増やしても、購買に結びつかない例が多数見受けられます。そのようなときにMAを導入すれば、無駄なく効率的な見込み顧客育成が可能です。
企業が求める利益に沿ったアプローチが必要なため
企業が購買行動をするときには、必ず合理的な目的が存在し、利益が無い購買を行うことはありません。とはいえ、どのような利益を求めて自社の情報にアプローチしてきたのかが、よく把握できていないこともあります。
そのため、顧客に接する担当者は、接触してきた見込み顧客が欲しい情報よりも、自社がアピールしたい情報を押し付けてしまうこともよくあります。
このようなミスマッチを防ぐには、顧客のWeb上での行動を解析して、どのような関心を持って自社の情報にアクセスしたのかをできる限り理解することが重要です。
MAツールがあれば、見込み顧客がWeb上でどのような行動をしているかを確認できます。そのため、どこを改善したらよいのかが明確になり、より的確で効率的な改善ができます。
見込み顧客にアプローチ優先順位をつける必要がある
見込み顧客の見当をつけてアプローチすることはマーケティング上重要ですが、見込み顧客に手あたり次第接触しても効率は上がりません。強い購買意欲を持って情報にアクセスしてきた企業と、たまたま情報に接した企業とを同列に扱うのは、むしろ好ましくないこともあります。
担当者は、当然見込み顧客の優劣を判断しているはずですが、個人の判断は主観的に行われることも多く、結果につながらない恐れもあります。
MAツールがあれば、見込み顧客の関心度を自動的に数値化してアプローチの順位を明確化できるので、客観的でより正確な判断が可能です。そのため、商談の獲得や受注に至る道のりが見えやすくなり効率的なアプローチができます。
BtoBにおけるMAの具体的な活用方法
ここからは、BtoBにおいてMAツールを導入した際の具体的な活用方法を紹介します。
メールマーケティングによる見込み顧客育成
メールマーケティングはBtoBで非常に良く使われる顧客育成手法です。
同一の情報を一斉送信するメルマガが一般的ですが、顧客を何らかの基準で分けて管理し、それぞれに適した情報を送るセグメントメール(ターゲットメール)や、見込み顧客の育成度合いに合わせて送るステップメールなどもよく利用されています。
メールマーケティングではただ送信するだけでなく、開封率や添付情報をクリックした頻度、メールを通じて期待したURLへアクセスした数などを管理して問題点を抽出し、次のマーケティング施策につなげていくことが重要です。
Web行動に沿った確実性の高いアプローチ
MAを導入すれば、見込み顧客が自社のWebサイトにアクセスしたときの行動把握が可能です。MAツールがあれば単にアクセス数を把握するだけでなく、「最も時間をかけて閲覧したのはどのページか」、「どのページで離脱したか」といった情報を得ることも簡単です。
そのため、個々の見込み顧客がどのような情報を必要としているのか、興味の度合いはどのくらい高いのかを確認してからアプローチすることで効率化でき、商談に発展する案件を増やすことに役立ちます。
スコアリングによるアプローチ優先順位付け
MAツールは、自社のWebサイトにアクセスした見込み顧客の行動を分析し、興味度合いを数値化する機能を持っています。例えば、サイトにアクセスはしたもののわずかな時間が留まっただけであればスコアは低く、一方で商品やサービスの情報を細かく閲覧して長く滞在していればスコアは上がります。
さらに、導入事例を見た、資料請求をした、ホワイトペーパーをダウンロードした、送付したメルマガからリンク情報を見た、といったポイントごとに加点していけば、高い精度で見込み顧客の優先順位が把握できます。
BtoBでMAを導入・活用する際のポイント
MAはただ導入しただけで大きな成果が約束されているというわけではありません。そこで、BtoBの販売戦略において、MAを導入・活用する際に注意すべきポイントを挙げていきます。
自社ターゲットの特徴を把握する
どのようなマーケティング戦略を取るとしても、自社の商品やサービスを購買してくれる顧客の特徴を絞れていなければ効率化はできません。例えば、自社サイトを熱心に閲覧する顧客がいたとしても、業種や規模感が想定するターゲット像と大きくずれていれば、上位の見込み顧客として扱うのは適切ではありません。
また、ターゲットがどのようにして自社の商品やサービスを購買するかを把握することも重要です。例えば、関連業種全般に興味を持って情報にアクセスする企業の中から、自社商品に注目する見込み顧客が生まれ、他社製品との比較検討に移行するといった動きが把握できていれば、メールマーケティングの手法も描きやすくなるはずです。
抱える見込み顧客数や活用できるコンテンツを把握する
見込み顧客数が数社しかない場合や、情報発信に活用できる自社のWebコンテンツがほとんどない場合などはMAツールを有効活用するのは困難です。
仮にWebコンテンツを増やしていくことも含めてMAを導入するのであれば、どのようなコンテンツを増やすのかを目的に合わせて考えていく必要があります。
自社が世間にあまり知られていない状態から初期見込み顧客の増加を狙うのであれば、メルマガコンテンツの充実やセミナーやオンライン講座などの開催、Web広告展開などの手法も有効です。もちろん、初期見込み顧客だけが増えても、商談や購買に至る数はごく少数です。
さらなる育成のためには、ブログコンテンツなどのオウンドメディアやターゲット層に合わせたSNSの活用、商品導入事例集やホワイトペーパーの充実、商品やサービスの説明動画制作など、上位見込み顧客に導いていくコンテンツも合わせて用意していく必要があるでしょう。また、事例集や動画などは1度作れば終わりではなく、常にアップデートする必要があります。
商談創出後の社内フローを明確にしておく
見込み顧客育成が奏功して商談創出に発展したとしても、最終的にクロージングできなければ利益にはつながりません。
しかし、BtoBの分野ではクロージングに至るまでの期間が長いことが多いという実情もあり、時間の経過とともにいつの間にか商談自体が途中で埋もれてしまったり、必要以上に決定をあおり過ぎて顧客にマイナスイメージを与えてしまったりする恐れもあります。そのため、 商談創出後の社内フローを決めておくことが非常に重要です。
営業的な側面で考えれば、相手からの相談を受けて対応していく形と、積極提案していく形が考えられます。
また、自社の商品やサービスの良さをアピールするか、価格面での利益を強調するか、といった考え方でフォローの方法も変わるでしょう。
さらに、フォローするタイミングの基準を作っておくことで、放置されたままになる見込み顧客ができてしまうことも防止できます。
BtoB企業がMAツールを使うと、商談に至るまでの工数を減らせたり、マーケティング戦略の効果的な展開ができるので顧客への的確なアプローチを実践でき、自社の商品、サービスの購買活動をより効率よく行えます。
まとめ
見込み顧客が多いBtoBの販売戦略において、MAツール導入は以下のような効果をもたらします。
- 見込み顧客に対する中長期的な育成ができる
- 顧客の利益に沿ったアプローチができる
- スコアリングでアプローチの優先順位を整理できる
このように、顧客への効果的なアプローチを効率的に行えます。