前回の最後ではインサイドセールスの取り組みを社内に拡充したことによって、リード件数が以前の10倍の16,000件になったという話をしました。
では、これが成果としてどうなったかというのを今回お話したいと思います。
目次
マーケティング室1年目の成果(2020年12月)
1年目の成果はずばり「新規案件の受注件数増加」です。
インサイドセールスの対象分母を10倍にした上でインサイドセールス活動を行ったことで、「休眠クライアントや既存クライアントからのご相談案件増加および、新規案件の受注件数を増加」という成果に繋がりました。
ただ、ここで1点補足としてお伝えしておきたいのが、“売上額”としての大きなインパクトには繋がっていない
ということです。
これを聞いた方の中には、
「インサイドセールスのアプローチ分母が10倍になったんだから売上も10倍になったのでは?」
と思う方もいるかもしれないので私個人の見解をお伝えさせていただくと、このタイミングで“売上額”に繋がらなかったことは当然だと考えています。
というのも、BtoBにおける受注までのプロセスが長いからです。
BtoB業界に携わっている方は特に理解していただけると思うのですが、BtoBにおける受注までのプロセスは基本的に以下の流れで進みます。
認知→興味→比較検討→商談→条件提示(見積)→受注
これに関しては、「なぜBtoBでマーケティングオートメーションが必要なのか?具体的な活用方法や導入ポイントも解説」の「BtoBにおける購買の特徴」でも少し触れていますが、要はBtoBでは「受注までのプロセスが長くかつ複雑」なので、すぐ売上額という成果には繋がらなくて当然だよね
という考えです。
(だからこそ、日ごろからインサイドセールスによる接点が重要になるかなと。)
このように、マーケティング室立ち上げ1年目は“売上額”として大きなインパクトは与えられなかったものの、「新規案件の受注件数増加」という成果が出たことは大きな自信に繋がりました。
新たな課題:MAツール(2020年12月)
マーケティング室の立ち上げ1年目も年末に近づきました。コロナの猛威は収まることがなく、出勤と在宅を繰り返したりと、環境が安定してない時期でした。だからこそかもしれませんが、この頃のマーケティング室は本当に忙しかったことをよく覚えています。
例えば、弊社は印刷会社ということでインサイドセールスではメルマガだけではなく、DMなどによるオフラインでのアプローチも実施していたので、
- 定期的なリストのクリーニングの実施
- メール不達や住所移転のタグ付け
- 上記に付随する営業担当者との細かいやり取り
など「リストとしての価値」を高めつつ、並行してメルマガの情報発信も行っていきました。
また、インサイドセールスによるメルマガ自体も配信母数が増えたことで、ありがたいことに反応も増えていき、インサイドセールス→営業へのトスアップ数が増えてきたことは嬉しい状況でした。
しかし一方で、私自身がフロントの営業も兼務しており初動対応なども行っていたことも相まって、正直追っかけるので精一杯になりつつありました。
それが積み重なって徐々にある不安材料も出てきました。
それは何かというと、
1. インサイドセールス分母が増えたことで今のMAツールでは少し手狭になりつつあった
2. 新しいリード(お客様)の獲得が思うように進んでいない
という点です。
2点とも大きな課題でしたが、まずは前者の「MAツール」から手をつけることにしました。
新しいMAツールの検討と決定(2021年1月)
先に誤解がないように先にお伝えしたいのが、当時使用していたMAツールは初心者の我々にも使いやすく、料金も手ごろでありましたので、スタートアップとしては非常に良く、個人的には我々のような状況に置かれた企業の方にはオススメしたいと思えました。
ただ、マーケティング室としての活動開始から1年経過して、インサイドセールス対象リストが16,000件を超えたことで、そのMAツールでは少し手狭になっていたのも事実です。
また、もう1つの課題である「新しいリード獲得」ここを補えるツールを同時に探しており、それを解決するために各社のMAツールを比較検討しました。
今の自社にマッチしているか?という大前提以外の主な比較のポイントとしては
- 料金体系
- 新規流入先が可視化出来る点
- 各種機能の使いやすさ
- UIの見やすさ
- サポートの手厚さ
- 出来れば新規リード獲得に繋がる機能がある
などを様々な点を考慮しました。
そして最終的に導入決定したのが「SATORI」でした。
こうして2021年からMAツールを新しく「SATORI」に切り替え、気持ちも新たにスタートを切ることに。
※ちなみに「SATORI」が気になる方は、良ければ以下の記事もご覧ください。
弊社の「SATORI」運用の主担当であるS君が、“実際に使っているユーザー目線ならではのレビュー”記事を執筆してくれたのでかなり参考になるかと思います。
2年目の方針(2021年1月)
1年目はコロナに翻弄されながらも目標であった「インサイドセールス活動の確立」が達成されました。
営業的な視点から見ると“売上額”がついてきていたわけではないので完璧とは言いにくい部分はありましたが、「新規案件の受注件数増加」という点は、1年目の手ごたえとしては悪くなかったと思います。
そのことを自信にして、2年目の目標として「集客/リード獲得の確立」を掲げていましたので、2021年1月から新たな目標に向かって動きだしました。
同時に2年目は数値的な目標として1年目には目標として掲げていなかった「インサイドセールス起点での営業へのトスアップ」「トスアップ後の受注数」「メルマガの配信数」「メルマガの開封率」なども、1年目の実績を踏まえ、我々チームとしてのKPI・KGIとして設定するようにしました。
新たな課題:メルマガリストの減少(2021年2月)
2年目の目標を立てた際には如実には表れていませんでしたが、この頃の課題として顔を出し始めたのが「メルマガの配信停止(オプトアウト)によるリストの減少」でした。
どのくらいの数が配信停止になっていたかというと、約30件くらいです。(当時メルマガは月2本程度の配信だったため月単位にすると60件前後の配信停止)
逆にリストの増加については月50件くらいだったので、毎月マイナス10件ほどというイメージですね。
我々としてはお客様が役立つ情報を発信しているつもりでしたが、大前提として情報の価値は受け手であるお客様が判断することです。
ポジティブに捉えて反応をいただけるケースもあれば、「あまり役に立たない情報」「よく知らない会社からくるメール」「また研文社から何かきた」というネガティブな受け止められ方があるのも事実。(これがメールマーケティングの難しさですね。)
そういった我々の力不足からネガティブな受け止められ方をされたお客様からは配信停止依頼が来てしまい、メルマガ配信リストからも外さないといけません。
コロナ禍の影響でお客様と対面でのコミュニケーションが限られている状況で、配信停止によるリストの減少もあり、メルマガ配信内容の最適化を行いつつ、「リストを増やす=新規リード獲得の必要性」がより一層増してきました。
新たなリード獲得手法の考案(2021年2月~6月)
「メルマガ配信リストの減少」という課題が顕在化されたことで、2年目の目標である「集客/リード獲得の確立」この部分に早急に強化していこうと考えました。
弊社はこれまで集客・リード獲得の手法として、展示会や対面営業で新しいお客様との接点が生まれていましたが、コロナの影響もあり展示会に出展する可能性もなく、対面営業も必要最低限の案件対応が中心となり、新しいお客様との接点が全く生まれませんでした。
こうなると新たな手法で集客をしないといけない。
そんなことを考えていたところ、Y君が新たな施策を提案してくれました。
それがこのオウンドメディア「コミュニケーションサプリ」の立ち上げ・運営です。
オウンドメディアでお役立ち情報を発信することで集客し、オウンドメディアを通じて資料ダウンロードやメルマガ登録してもらい、新しいお客様の実名化=リード獲得を図るのが狙いでした。
オウンドメディアについては既に色々な会社が運営・発信しており、同業他社の印刷会社だけとって見ても結構な数の会社がメディアとして立ち上げていたため、「いまさら感」な部分もゼロではありませんでした。
なので当時は「後発組の当社が取り組んでも上手く集客できるか不安」「途中で更新が頓挫してしまう」などとネガティブな気持ちが少しありましたが、「いまさらだろうが“今”やらないと集客は増えない!」という自分たちで信念を持ち立ち上げることを決めました。
今現在運営している当メディア「コミュニケーションサプリ」も、Y君がかなり前から構想があり計画的に考えてくれていたようで、「立ち上げの時期」「事前の記事のストック数」「更新頻度」などをマーケティング室の3人で共有し、ロードマップを作りました。
オウンドメディア開設~運営開始(2021年7月~)
Y君を中心にオウンドメディアの準備を進め、2021年の7月5日に本オウンドメディア「コミュニケーションサプリ」が立ち上がりました。
ただ、立ち上げ時の記事ストックは多少あるとはいえ数えるほどしかなく、立ち上げ初期なので当然ではありますが、アクセス数の内訳も検索エンジンからはほとんどなく、メルマガ経由で見てくれる人がほとんどでした。
しかし我々はここで焦ることはありませんでした。
なぜなら、オウンドメディアは“資産を作る中長期的な施策であること”という共通認識を持てていたからです。
なので、立ち上げから半年は特にアクセス数に一喜一憂するのではなく、コンテンツ毎にペルソナをしっかり作って「困っている人に役立つコンテンツを増やし続ける!」これを信念としてました。
通常、私のような管理職だと“数字が全て”と考えがちで
- 「PV(アクセス)伸びてなくない?」
- 「問い合わせ(新規リード)こないね」
- 「オウンドメディアって売上に繋がってないじゃん」←これはめちゃくちゃ話が飛躍してる気もしますが・・・
などと、オウンドメディアおよび、立ち上げた本質を見誤ってしまうことがありますが、その点では信念をぶらさずに進んできたことで、徐々にですがアクセスも増えてきており、少しでも役立つメディアになりつつあるのではないかと思っています。
(本メディアは2022年10月現在でもまだメディア2年生なので、これからも役立つ情報を発信できるよう頑張ります!)
リスティング広告運用開始(2021年11月~)
先述のオウンドメディアでの集客はあくまでも“中長期的な施策”であり、役立つ情報を発信し続けることで集客数が増える施策です。
しかし、当時のマーケティング室ではもう1つの使命が課せられていました。
それは「今すぐ客の獲得」。
というのも、日々の営業活動だけでは新規開拓が加速度的に進んでいかないので、そこをマーケティング室で何とかして欲しいと強く命を受けたわけです。
元々の我々の使命が「リード獲得」と「リード育成」が中心であったのでしたが、リード獲得の中でも“即案件化するような今すぐ客の獲得”というのはまた違うベクトルで物事を考える必要がありました。
そこで有効な手段として考えたのがリスティング広告でした。
リスティング広告の経験や知見のある方ならお分かりになるかもですが、広告を運用するには一定の費用=広告費がかかります。(商材や業界にもよりますが月の平均予算30万円が一般的といわれてます。)
しかしお恥ずかしい話ですが弊社には潤沢な予算がなく、新しく着任されたF役員から「3ヵ月50万で運用してくれ!」との指示がありました。
(広告代理店の方からすると無理難題に聞こえるかもしれませんが、我々くらいの規模感の企業での実情はこんなことがほとんどなのではないでしょうか。)
広告代理店に依頼できるほどの予算がないだけでなく、社内にリスティング広告運用できる人材がいないという現実。
しかしこのリスティング広告を提案してくれて、オウンドメディアを運営しているY君が手を挙げてくれたので、Y君を中心に完全インハウスでリスティング広告を始めることに。
もちろんY君もリスティング広告運用未経験、加えて少額予算というハードルの高い中で独学で学びながらの運用だったということもあり、当然最初から成果は出ませんでした。
当時運用していた商材は、その特性を考えると実はあまりリスティング広告に向いていなったと今なら思えるのですが、始めた当初は知見もない状態だったのでリスティング広告に向き不向きもわからず、ただでさえ少ない予算が湯水のように消えていき、一晩経過したら数万なくなっていたのに、新規流入おろか問い合わせフォームまでもたどり着いてもらえない・・・そんな日々が続いてました。
しかし、日々の運用の中でキーワード変更やランディングページの改修や効果的と思われる配信日時/時間選定、そもそもの商材変更などPDCAを回した結果もあって、数リードですが会社からの予算が尽きる前に目的であった「今すぐ客」を獲得できるようになってきました。
またリスティング広告経由の案件は、その後の営業の努力や営業的戦略もあり新規受注ができるようになってきました。
その結果、お試しで3ヵ月50万の広告運用の予定でしたが、ある程度成果が出たので継続した施策として運用することになり今年も予算化され、今現在も「今すぐ客」のリード獲得施策として、マーケティング活動の中に組み込まれております。
小話:実は筆者もリスティング広告してみたかった
リスティング広告の運用に関してはY君が担当してくれてますが、私自身やってみたいことの1つでした。というのも、この頃の私には1つ考えがあったからです。
それは「いずれは自分たちのマーケティング知見をお客様へ提供したい。そのため重要なのは、できる限りのことを経験していきたい。なので多少の投資をして成功しようが失敗しようが、あらゆるマーケティング施策をやるべき。」という考えでした。
これは私がマーケティングの勉強をした際に某マーケターの発言を受けてのものでした。
もちろん私自身が理解して、運用したことを語れるのがベストではありますが、営業兼務もしていることもあり、そこまでやったら私自身がパンクしてしまうことも考え、リスティング広告運用はY君に任せて、自身は全体像だけ把握して会社への稟議だけを担当し、チームとしてチャレンジ出来る環境を作れればと思ってました。
マーケティング室2年目の成果(2021年12月)
マーケティング室2年目の成果は概ね達成したのではないかなと思います。
目標として掲げた「集客/リード獲得の確立」ということで、スタートこそは苦戦しましたがオウンドメディア立ち上げ~運用とリスティング広告という「オンラインでの集客」の目途が立ったからです。
ただし、メルマガ配信のオプトアウトで減り続けているリードの分母は完全に補えたわけでもなく、年初に立てた目標もクリアできませんでした。
クリアできなかった目標を少し詳しく言うと、
「営業へのトスアップ」
この目標が2割ほど達成出来ませんでした。
弊社のトスアップの基準はMAツール「SATORI」でのスコア計測を活用しており、一定のスコアに達したお客様へセカンドアプローチを打診して商談を生み出すまでですが、
「MA上で高スコア=課題解決の手段などを求めているではない」
このギャップがトスアップまで至らない点でした。
(このギャップはMA導入したての企業様で“あるある”かもしれませんね。)
このギャップを埋めるべく方策として「シナリオ作成」したり、「スコア分析をして具体的なニーズを探る」などをして改善を試みていますが、まだまだな部分かと思うので今も試行錯誤しながら運用しています。
他にも 「トスアップ後の受注数」なども未達成で終わってしまったりということを反省材料としてしながら次年度への改善を皆で話し合いながら2年目を終えました。
次回予告
今回のVol.4では、マーケティング室1年目の活動・成果~2年目の活動・成果を赤裸々にお話させていただきました。
次回は(一旦)最終回ということで、2022年のことをアウトプットしながらお伝えできればと思っています。何なら来年2023年についての構想なども書いてみようと思いますので、ぜひ読んでくださる方は楽しみにしてください。
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