CSR(企業の社会的責任)とは?意味やCSR活動の具体例をわかりやすく解説

CSR(企業の社会的責任)とは?意味やCSR活動の具体例をわかりやすく解説
2025年7月15日
SDGs

CSR(企業の社会的責任)は、現代のビジネス環境において、経営者や企業活動を担う担当者にとって欠かせない重要な概念です。

グローバル化が進む現代社会では、企業は単に利益を追求するだけでなく、環境保護や人権尊重、地域社会への貢献など、社会に対する責任を果たすことが求められています。特に近年は、SDGsやESG投資の台頭により、CSR活動が企業の競争力を高める戦略の一部として注目されるようになっています。

本記事では、「CSRとは何か」という基本的な視点から7つの原則、メリット・デメリット、さらに企業の取り組み事例までを幅広く解説します。

CSR(企業の社会的責任)とは

CSR(Corporate Social Responsibility)とは、日本語で「企業の社会的責任」と訳されています。企業が利益を追求するだけでなく、社会や環境に対しても責任ある行動をとり、説明責任を果たしていくことを求める考え方です

例えば、従業員が働きやすい職場環境を整えたり、製品を製造する過程で環境への負荷を減らしたり、地域社会へ貢献する活動を行ったりすることが含まれます。本章では、まずCSRが注目されるようになった背景を明らかにし、その原則と中核主題について解説します。

CSRが注目された背景

CSRが注目される背景には、社会や経済の変化、環境問題の深刻化、そして消費者や投資家の意識変化があります。かつて企業は利益の追求が中心でしたが、地球規模の環境破壊や労働環境の問題が露呈し、それに対する責任が問われるようになりました。

消費者は「環境に配慮した製品」や「社会貢献に積極的な企業」を選ぶようになり、企業は信頼を得るためにこうした期待に応える必要があります。また、ISO26000やSDGsなどの国際的な指針が広まり、CSRが事業戦略の一部として捉えられるようになりました。CSRは企業がステークホルダーとの信頼関係を築き、持続可能な成長を実現するために欠かせない活動となり、重要性が増してきています。

さらに、帝国データバンクの「SDGsに関する企業の意識調査(2024年)」によると、「SDGsに取り組んでいる企業は29.7%」「取り組みたいと思っている企業は24.8%」という結果になっており、SDGsに積極的な企業はあわせて55.4%とその割合は前年よりも増加しています。

特に、環境問題への対応や働き方改革、地域社会との協力など、具体的な取り組み内容が深化していることが指摘されています。これにより、CSR活動とSDGsの目標が密接に絡み合い、企業の社会的責任を果たす動きがさらに加速していると言えます。

参考:帝国データバンク「SDGsに関する企業の意識調査(2024年)

CSRの7つの原則と7つの中核主題

CSRの「7つの原則」と「7つの中核主題」

CSRを体系的に捉えたい場合、国際規格「ISO26000」に基づく指針が役立ちます。この規格では、企業が社会的責任を果たすうえで重要な「7つの原則」と、具体的に取り組むべき分野「7つの中核主題」が示されています。

7つの原則

CSR活動を行う際に企業が心がけるべき基本姿勢をわかりやすく説明すると以下の通りです。

7つの原則説明
説明責任自社の活動が何を目的として社会にどのような影響を与えるか、わかりやすく説明する
透明性意思決定や事業活動を透明にし、社会に開示する
倫理的な行動法律や社会規範を守り、公正で正しい行動を行う
ステークホルダーの尊重関わる全ての利害関係者の意見や権利を尊重し活動する
法の遵守事業活動において、国内外の法令を遵守する
国際規範の尊重国際的な基準や規範を理解し、適切に対応する
人権の尊重事業活動において人権を尊重し、保証・保護する

7つの中核主題

CSRで重点的に取り組むべき具体的な分野も7つに分けられます。

7つの中核主題説明
組織統治企業の意思決定プロセスの透明化、内部監査の定期的な実施
人権ダイバーシティの推進、差別のない労働環境の整備
労働環境労働衛生プログラムや休暇制度の改善
環境二酸化炭素排出量の削減、再生可能エネルギーの導入、廃棄物のリサイクル促進
公正な事業慣行コンプライアンスの尊重、取引での公平性の確保
消費者課題品質管理や情報開示、消費者相談窓口などの対応
コミュニティへの参画と発展地域での教育支援活動や地元の環境保護プロジェクトへの資金援助

CSRと関連のある言葉

CSRは、企業活動を通じて社会や環境への責任を果たす理念として広く認識されています。しかし、近年、CSR以外にも企業が取り組むべき理念や概念が注目されています。それぞれの言葉には共通点がある一方で、異なる特徴や意義を持っています。ここでは、CSRと関連のある言葉について、その違いを解説します。

CSVとの違い

CSV(共通価値の創造)は、CSRとは異なり、企業の利益追求と社会課題の解決を同時に実現する考え方です。CSRが企業の社会貢献活動に重点を置くのに対し、CSVは事業活動そのものを通じて価値を生み出すことを目指します。例えば、環境に配慮した製品を開発することで、地球環境を保護しながら収益を上げるといった具体的な取り組みがCSVの特徴です。

SDGsとの違い

SDGs(持続可能な開発目標)は、国連が定めた2030年までに達成すべき17の国際目標を指します。これらは貧困撲滅や環境保護、人権尊重などの広い課題を掲げています。一方、CSRは主に企業が担う社会的責任に焦点を絞った概念であり、SDGsの目標を実現する手段として活用されることもあります。CSRは企業の視点から、SDGsは国際社会全体の視点からアプローチを行う点で異なります。

■関連記事:SDGsの達成に向けて私たちにできることとは?17の目標や取り組み事例を紹介

ESGとの違い

ESG(環境・社会・ガバナンス)は、投資の判断基準として企業の持続可能性を評価する指標を指します。CSRが企業活動の善意や責任を推進するものであるのに対し、ESGは投資家の視点で企業の社会的価値や将来性を評価するものです。例えば、環境に配慮した事業を展開するCSR活動が、投資家にとってはESGの「環境」の評価要素として映ります。このようにCSRは企業の活動目標である一方、ESGは投資の判断材料となります。

サステナビリティとの違い

サステナビリティ(持続可能性)は、社会や環境を配慮し、未来世代のニーズを満たすために現在の資源を合理的に使用する考え方です。CSRは企業が主体的に社会や環境の問題に取り組む活動を意味するため、サステナビリティはCSRの理念を実現するための方向性と捉えることができます。両者の関係は深く、CSRが具体的な活動であるのに対し、サステナビリティはその取り組みの根底にある価値観といえます。

■関連記事:サステナビリティとは?意味やSDGsとの違い、企業や個人の取り組み事例をご紹介

コンプライアンスとの違い

コンプライアンス(法令遵守)は、企業が法律や規制を守ることを指します。CSRは社会的責任の観点から行動する理念であるため、コンプライアンスもCSRに含まれる要素のひとつです。ただし、CSRは法律を守るだけではなく、社会課題や環境問題に自発的に取り組む精神を含んでいます。つまり、コンプライアンスは最低限守るべき基準であり、CSRはその基準を超えて積極的な社会貢献を目指す活動を指します。

CSR活動のメリット

CSRは単なる社会貢献ではなく、企業の事業活動にとっても大きなメリットをもたらします。企業がCSRに真剣に取り組むことで、社会的価値を創造するとともに、企業自身の成長にもつながります。以下では、CSR活動がもたらす主要なメリットについて解説します。

ブランド価値の向上

社会や環境への責任を果たしているというポジティブなイメージを築くことができます。これにより、消費者や取引先からの信頼を深めるだけでなく、競争市場において優位性を確立することが可能です。例えば、環境負荷を抑えた製品の開発や地域社会への貢献などの活動は、これらを公表することで企業のブランド価値を高め、消費者がその企業を選ぶ一因となります。

昨今の市場において、エシカル消費を重視する傾向が強まっているため、CSRは重要な戦略のひとつといえます。

■関連記事:エシカルとは?意味や身近なエシカル消費の例をご紹介

優れた人材の確保と社員の満足度向上

CSR活動に取り組む企業は、働きがいや理念を重視する求職者に注目されます。特に、社会や環境に配慮した活動を行っている企業は、多様な価値観を持つ優秀な人材を引きつけることができます。また、企業のCSR活動が従業員にも共有されることで、社員の企業への信頼感や働きがいが向上する可能性があります。

例えば、地域と連携したボランティア活動や環境改善の取り組みなどを通じて、社員同士が一体感を感じる環境を提供すれば、従業員満足度も高まります。このように労働環境が良くなることで、離職率の低下にもつながり、優れた人材の定着が期待されます。

長期的な利益向上とリスク軽減

CSR活動は短期的な利益が目的ではなく、長期的な視点で企業価値を向上させるものです。例えば、環境への配慮や公平な労働条件を整備することで、消費者や投資家からの信頼を得ることができ、結果として事業の安定につながります。

また、企業の社会的責任を果たしていることが認識されると、規制強化や社会的な批判によるリスクを未然に防ぐことができます。さらに、課題解決型の事業を展開することで新しい市場や顧客層を開拓できる可能性が生まれます。このようにCSR活動は、社会との関係を強化しながら持続的な収益を確保するための重要な手段となります。

CSR活動のデメリット

企業が取り組む際にはいくつかの課題やデメリットが伴う場合があります。これらの側面を理解し、適切に対策を講じることでCSR活動を効果的に進めることができます。以下では、CSR活動の代表的なデメリットについて解説します。

コスト(費用)の負担が大きい

必然的に資金を投入しなければならない場面が多くあります。例えば、環境に配慮した設備への投資、地域社会への寄付や支援活動、従業員向けの教育プログラムの実施などが挙げられます。これらの活動は企業にとって財務的な負担となる場合があり、特に規模の小さな企業にとっては大きな課題となります。

また、活動の効果が収益として直接反映されるまで時間がかかることがあり、それを短期的な視点で捉える企業にとってはデメリットと感じられる場合があります。CSR活動には初期投資や継続的な費用が必要であるため、予算配分を慎重に検討することが求められます。

継続的な取り組みが必要で人手がかかる

短期的に成果を求めるものではなく、長期的かつ継続的な取り組みが不可欠です。そのため、企業内部で活動を推進する専任のチームや担当者を配置する必要があり、人材や時間的資源の負担が生じます。さらに、地域や社会のニーズや期待は時代とともに変化するため、その都度活動内容を見直し、適応していく必要があります。

こうした継続的な取り組みには、戦略の立案や評価、実行に関する専門知識を持った人材が欠かせず、企業にとってリソースの配分が課題となるケースも少なくありません。また、CSR活動が一時的になってしまうとブランドイメージが低下するリスクもあるため、継続的な努力が求められる点は企業にとっての負担となる可能性があります。

CSR活動に取り組む企業事例

CSR活動は多くの企業において、自社の成長だけでなく社会や環境への貢献を目指した重要な取り組みとなっています。ここでは、実際にCSR活動に積極的に取り組んでいる企業の具体例を3つ紹介し、それぞれを解説します。

ユニクロ(ファーストリテイリング)

ユニクロは、環境保護活動と社会貢献活動を組み合わせた独自のCSRを展開しています。消費者から不要になった衣類を回収し、それを必要とする難民や災害被災地への支援物資として提供する「全商品リサイクル活動」を行っています。

この活動により、廃棄物を削減するとともに支援が必要な人々への貢献を実現しています。他にも、リサイクル素材を活用した商品の開発に力を入れて、サステナビリティを意識した製品づくりを推進しています。

参考:UNIQLO「RE.UNIQLO」「サステナビリティ

トヨタ自動車

トヨタ自動車は、環境分野での技術開発および地域社会への積極的な支援活動を行っています。

世界的に需要が高まる燃費性能の優れた「プリウス」などのハイブリッド車を販売することで、CO2排出量の削減に貢献しています。また、電気自動車や燃料電池車など、次世代エネルギー技術の研究開発を進め、運輸業界全体の環境負荷軽減に大きく寄与しています。

地域の教育や住民との連携を目的としたイベントや施設提供を行い、交通安全や環境教育を推進しています。

参考:トヨタ自動車「サステナビリティ

研文社

弊社では、地球温暖化防止活動として、エネルギー使用の節約と合理化を主として、あわせて再生可能エネルギーを各工場に導入し、温室効果ガスの削減に取り組んでいます。さらに、印刷物におけるお客様のカーボンゼロ・カーボンニュートラル対応を支援するサービス「環境配慮型プリント」を提供し、地球温暖化対策への積極的な推進を行っています。

他にも、有害物質・廃棄物の低減への取り組みや環境保全の各種認定、イニシアティブを取得、賛同などの取り組みも行っています。

CSR活動に取り組む際に気を付けるポイント

企業の社会的責任を果たす重要な取り組みのCSR活動ですが、効果を最大化し健全な活動を維持するためには、いくつか気を付けるべきポイントがあります。

以下では、CSR活動を推進する際に注意すべき3つのポイントについて解説します。

明確な目的と目標を設定する

何のためにその活動を行うのか、達成したい目標は何なのかを明確化することが重要です。目的が不明確なままで取り組むと、活動が広がり過ぎて方向性を見失ったり、期待する効果が得られなかったりする可能性があります。

例えば、「地域社会への貢献」を目指す場合でも、具体的に「環境問題を解決する」や「教育支援を行う」といった明確なテーマを設定することが大切です。また、活動の進捗や成果を測るためのKPI(重要業績評価指標)を設定すると、効果的な管理と分析が可能になります。

社内の認識を統一する

企業の一部門の取り組みにとどまらず、全社的な取り組みとして進めることが望ましいです。そのためには、従業員全員がCSRの意義を理解し、行動に反映できるようにすることが必要です。もし社内で認識が統一されていないと、活動そのものが形だけのものになり、企業全体の本来の価値と一致しなくなるリスクがあります。

例えば、従業員への教育研修や定期的な情報共有を通じて、CSR活動の意義や具体的な方法を伝えることで、理解を深め、企業全体で一丸となって取り組む環境を整えることができます。また、従業員のアイデアや意見を取り入れることで、より実効性のある活動を実践することが可能です。

社会のニーズを正確に把握する

CSR活動は社会や地域の課題解決に向けたものであるため、そのニーズをしっかり理解することが重要です。企業が自分たちの視点だけで活動を進めると、社会からの支持を得られなかったり、的外れな取り組みになったりする可能性があります。

例えば、地域社会の環境問題に取り組む場合、その場所特有の課題(河川の汚染、産業廃棄物の処理など)をしっかり把握したうえで、それに即した活動を展開することが必要です。また、活動を開始する前に専門家や自治体、NGOなど外部のステークホルダーと連携し、ニーズに基づいた計画を立てることが効果的です。そして、活動終了後には定期的な検証を行い、その成果を社会全体で共有することで、好循環を生み出すことができます。

まとめ

CSRは企業が社会や環境に対して果たすべき責任であり、現代のビジネスに欠かせない重要な取り組みです。社会的な価値を創造するだけでなく、企業自身の成長にもつながる可能性があります。

しかし、その一方で、コスト負担や継続的な取り組みが必要となるなどのデメリットも存在します。これらの課題を認識し、計画的に運営することで、CSR活動を持続可能な価値で成功させることができるでしょう。

当社では、印刷物におけるお客様のカーボンゼロ・カーボンニュートラル対応を支援する環境配慮型プリントサービスを提供し、環境保護への貢献を積極的に推進しています。当社の取り組みにご興味のある方やサービスについて詳しく知りたい方は、下記資料請求フォームよりお問い合わせください。

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