印刷と聞くと、自宅やオフィスでの家庭用プリンターを使った印刷を思い浮かべる方も多いでしょう。しかし家庭用プリンターではなく印刷会社に依頼する印刷物もあります。印刷会社に依頼する印刷物は出版物だけではなく、商業印刷などもあります。商業印刷とは企業や団体が事業活動に使うためのポスター制作、パンフレット制作などを指します。
本記事では、企業や団体が制作する商業印刷についての概要や種類などを詳しく解説します。
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目次
商業印刷の基礎知識について

印刷には本や雑誌などの出版物が当てはまる出版印刷以外にも、次のような種類があります。
- 商業印刷
- 包装印刷
- 事務用印刷
- 証券印刷
- 建装材印刷
- その他の印刷
このうち、商業印刷とは企業や団体が自社、自団体の事業活動に用いる印刷です。
商業印刷の概要
商業印刷と一言でまとめても種類は豊富で、宣伝用印刷と業務用印刷に分けられます。宣伝用印刷、業務用印刷の具体例は次のとおりです。
商業印刷の種類 | 具体例 |
---|---|
宣伝用印刷 | 社外向け:ポスター、パンフレット、折り込みチラシなど |
業務用印刷 | 社内向け:マニュアル、議事録、社史、料金表など |
商業印刷と出版印刷との違いは出版社が関わるかどうかです。商業印刷は企業や団体が独自で制作しますが、出版印刷は出版社が制作に関わります。
商業印刷の歴史
現在の商業印刷や出版印刷で用いられている印刷機の原理が誕生したのは1450年頃です。ドイツのヨハネス・グーテンベルクが発明した活版印刷術で使用されていたプレス印刷機は現在の印刷機と同じ原理です。
その後、凸凹がない平らな板を使うオフセット印刷機が1900年代初頭にアメリカで開発されました。オフセット印刷は商業印刷に限らず出版印刷などでも用いられています。
商業印刷の利用分野
商業印刷は自社の商品やサービスの販売促進、案内で利用されます。例えば、ポスターやパンフレットを商業印刷として作成することで、顧客に商品やサービスをアピール可能です。
また、社外だけではなく社内向けにも商業印刷は利用されます。自社の社員に向けたマニュアルや料金表なども商業印刷に含まれます。
商業印刷の役割と重要性
ポスターやパンフレットといった商業印刷は、自社の商品やサービスをアピールするために重要なアイテムです。さらに社内向けに制作する商業印刷も重要な役割を担っています。例えば商業印刷の一つであるマニュアルを作成すれば、社員の対応品質均一化や属人化の防止などにつながります。
商業印刷の種類について

商業印刷の方法には、次のようにさまざまな種類があります。
- オフセット印刷
- オンデマンド印刷
- フレキソ印刷
- グラビア印刷
それぞれにメリット、デメリットがあります。
オフセット印刷
オフセット印刷は先述のとおり歴史の長い印刷方法です。オフセット印刷は凸凹のない板を用いるため平板印刷とも呼ばれています。
オフセット印刷のメリットは、多くの印刷物をスピーディに印刷できる点です。大量に印刷することでコストを抑えられるため、商業印刷に用いられる傾向にあります。また、オフセット印刷は大きなサイズに印刷可能です。例えば841mm×1189mmのA0と呼ばれるサイズにも印刷できます。
一方で刷版を作成するための期間が必要なため、一定の納期が求められます。また、刷版の作成にあたっては費用がかかってしまいます。オフセット印刷は刷版の作成があるため、多様な印刷物を少量ずつ印刷するのには適していません。1種類ごとに刷版を作成する必要があるため、費用がかさみがちです。
オンデマンド印刷
オンデマンド印刷は「版」を使用せずデータを直接読み込んで印刷が可能です。版の工程を省けるため、完成までのスケジュール短縮やコスト削減につながります。版が不要なため、少量の印刷でも対応可能です。
一方でオンデマンド印刷は大量の印刷には適していません。オンデマンド印刷によって大量に商業印刷を作成するとなると、費用がかさんでしまいます。また、オンデマンド印刷は印刷のズレが生じる可能性があります。
■関連記事:【これだけ抑えれば大丈夫】オンデマンドとオフセットの違い、メリット・デメリットや印刷案件ごとの目安を解説
フレキソ印刷
フレキソ印刷は凸版印刷の一種です。柔らかなゴムや樹脂でできた版にインキを付着させて紙に写します。
フレキソ印刷はこれまで段ボールへの印刷がメインでした。しかし、欧米を中心にフィルムやラベルなどの印刷にも用いられるようになっています。フレキソ印刷は溶剤インキや水性インキ、UVインキなど幅広いインキを使用できるというメリットがあります。また、グラビア印刷と比べると速く、コストも抑えて製版も可能で、品種が多く小ロット印刷したいニーズに対応しやすい点も特徴です。
グラビア印刷
グラビア印刷は凹版印刷の一種で、イラストや写真を鮮やかに印刷可能です。グラビア印刷はオフセット印刷と同じく、刷版を用います。金属を加工して刷版をつくるため、平らな板を用いるオフセット印刷よりもコストがかかってしまいます。
グラビア印刷は環境への配慮という点でもデメリットがあります。印刷工程では人体に有害な揮発性有機化合物が排出されてしまいます。揮発性有機化合物は生殖機能に影響を及ぼしかねません。
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商業印刷のプロセスについて

商業印刷は次のようなプロセスで進んでいくのが一般的です。
- デザインとプリプレス
- 印刷と仕上げ
- 品質管理と検品
- 納品と配送
それぞれの工程について詳しく解説します。
デザインとプリプレス
印刷の前工程として、どのようなデザイン・企画にするのかなどをプリプレスとして決めます。例えば、どのような目的で印刷物を作成するのかをはっきりさせましょう。目的が明確でないとデザインや仕様もあいまいになってしまいます。コンセプトが明確になったら、デザインや仕様の検討、スケジュールなどを決めていきましょう。
実際に原稿を作成したら印刷会社に入稿します。その後、印刷会社が文字やデザインを指示どおりに配置した組版を作成します。組版が完成すると印刷会社から初校が届きます。自社でも原稿に誤りがないか校正作業を進めていきましょう。あわせて色味をチェックする色校正なども実施します。校正作業、色校正を終えると校了となり印刷に進みます。
印刷と仕上げ
校了となった原稿は刷版として印刷機に取り付けられます。印刷会社は色見本に従いつつ実際に印刷します。印刷会社は印刷を終えると仕上げへと進みます。印刷物の体裁はさまざまです。例えば、表面にコーティングを施して光沢感を出したいという依頼もあります。
他にもパンフレットであれば折り加工や製本加工、指定のサイズに断裁する断裁加工など、さまざまな加工が施されます。このような依頼者が希望する体裁に加工して仕上げる作業をポストプレスと呼びます。
品質管理と検品
印刷会社は印刷物の品質管理と検品も欠かせません。例えば、本番印刷の前に複数枚を印刷してクオリティをイメージに近付けるのが一般的です。また、ランダムに抜き取った印刷物から、不具合を確認する検品も行われます。印刷物は一枚不具合があると、前後にも発生している可能性があります。そのため、抜き取り検査をしないと、大規模な不具合につながりかねません。
納品と配送
仕上がった印刷物はクラフト包装されたまま配送、納品されるのが一般的です。しかし、納品方法は指定可能です。例えば、「ポスター用の筒に入れて納品」「指定の部数ごと梱包」といったような依頼者の希望に応じて、印刷会社が納品してくれます。
印刷会社に納品方法を指定する際は納期に注意しましょう。梱包作業に時間がかかると、納期がずれ込む可能性があります。納品の段階で遅れが発生しないように余裕を持って手配しましょう。
商業印刷の今後の展望

商業印刷の課題やデジタル化の進展など、商業印刷の今後の展望について解説します。
商業印刷の課題
商業印刷は今や印刷製品の多くを占めています。公益社団法人日本印刷技術協会の発表によれば、2021年における印刷製品別生産金額のうち商業印刷は35.2%にも達しています。この年、2015年以来の印刷業の生産金額はプラスに転じており、印刷別に見ると包装印刷に次いで商業印刷は結果に寄与しました。(※1)
しかし、出版印刷などは生産が減少しているとされています。これはインターネットによって印刷媒体のシェアが低下した、人口減少による企業、団体からの依頼が減少したなどの理由が挙げられます。
※1 公益社団法人日本印刷技術協会「2021年の印刷業の生産金額は3500億円、前年比1.0%増」
デジタル化の進展
商業印刷において注目されるのがデジタル化の進展です。従来の商業印刷では印刷の刷版をつくって大量印刷するオフセット印刷が主流でした。しかし近年はデジタル印刷機によって、デジタルデータから印刷できるオンデマンド印刷が用いられるケースもあります。オンデマンド印刷であれば従来よりも少ない枚数の印刷にも対応可能です。
持続可能性の重視
従来のオフセット印刷では大量に印刷をするため、自社で印刷物を在庫として抱える必要がありました。保管には費用がかかる上に、一定の時期がきたら廃棄が必要です。
例えば商品のパンフレットを作成しても、新商品や料金改定などがあれば廃棄しなければなりません。このような無駄を省き、持続可能性を重視するためにもオンデマンド印刷が注目されています。オンデマンド印刷は紙の廃棄だけでなく、CO2排出量の削減も期待されています。
環境に配慮して持続可能性のある社会づくりという点では、グラビア印刷からオンデマンド印刷印刷にシフトすることも大切です。先述のとおりグラビア印刷は作業工程で有害な物質が発生してしまうため、人や環境への負担が懸念されます。
カスタマイズ性の向上
少量の印刷に対応できるオンデマンド印刷の登場によって、カスタマイズ性が向上しています。例えば、ポスターのデザインを貼る場所ごとに変えたいといった場合、オフセット印刷では大量の部数を印刷する必要があります。しかしオンデマンド印刷であれば、デザインAを〇部、デザインBを〇部といったように、少量ずつの印刷が可能です。
弊社でも商業印刷の対応は可能です。お気軽にご連絡ください。
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