印刷には、平版印刷(オフセット印刷)、凸版印刷、凹版印刷、オンデマンド印刷(デジタル印刷)など、さまざまな種類の方法があります。印刷方式によって、用途や仕上がりが異なることをご存知でしょうか。
印刷を依頼する際は、媒体や用途に応じて適切な印刷方式を選ぶことが大切です。本記事では、主な印刷方法の種類や、印刷物が出来上がるまでの流れ、使用目的別に見た印刷物の分類について詳しく解説します。
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目次
印刷の方法について

印刷を発注するときに選べる印刷方式は、主に以下の5種類です。
有版印刷(アナログ印刷) |
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無版印刷(デジタル印刷) |
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印刷方式は大きく分けると、物理的な版(印刷版)を使用して印刷する有版印刷と、印刷データを用いて印刷する無版印刷の2種類あります。有版印刷は、使用する印刷版の形によって、さらに平版印刷や凸版印刷、凹版印刷、孔版印刷の4つの方式に分類することが可能です。この4つの印刷方式のことを4大印刷技術と呼ぶことがあります。
ここでは、それぞれの印刷方式の特徴や、一般的な用途を紹介します。
平版印刷(オフセット印刷)
平版(へいはん)印刷の特徴や主な用途を紹介します。
平版印刷の特徴
平版印刷はオフセット印刷とも呼ばれ、平らな版を使用して印刷するのが特徴です。版には凹凸がありませんが、表面の水と油分の反発力を活かし、インクを紙に転写する仕組みになっています。
用途
平版印刷は、書籍や雑誌、新聞などの出版物や、チラシやカタログなどの商業的な印刷物など、幅広い用途に使われています。多色刷りが可能で、大部数の印刷物を低コストで制作できるため、経済性が高い印刷方式の1つです。
凸版印刷
凸版(とっぱん)印刷の特徴や主な用途を紹介します。
凸版印刷の特徴
凸版印刷は平版印刷と違って、凹凸のある版を使用して印刷します。印鑑やハンコと同じように、版の盛り上がった部分についたインクを利用して印刷する仕組みです。凸版印刷は非常に歴史が長く、かつては活版印刷と呼ばれる方式が普及していました。今はフレキソ印刷が一般的で、環境にやさしい樹脂製の凸版を使用するのが特徴です。
用途
凸版印刷は、主に缶の表面に貼るプリントやシール、段ボールへの印刷などに向いています。また布やフィルムなど、紙以外の媒体にもくっきりと印刷することが可能です。
凹版印刷
凹版(おうはん)印刷の特徴や主な用途を紹介します。
凹版印刷の特徴
凹版印刷は、凸版印刷と同様に凹凸のある版を使用する印刷方式です。凸版印刷と違って、版の凹みの部分に溜まったインクを利用して印刷を行います。
凹みの深さによってインクの量を調節できるため、カラーや濃淡表現を得意とした方式です。凹版印刷はグラビア印刷とも呼ばれ、グラビアアイドルの語源にもなりました。
用途
凹版印刷は、主にカラー写真が多い雑誌や写真集などに使われてきました。またペットボトルの包装や壁紙など、紙以外への媒体の印刷にも適しています。
孔版印刷
孔版(こうはん)印刷の特徴や主な用途を紹介します。
孔版印刷の特徴
孔版印刷は、表面に孔(あな)の開いた版を使った印刷方式です。版の孔をインクが通過し、表面に付着させて印刷する仕組みになっています。
用途
孔版印刷は媒体を選びません。ツルツルの曲面のある媒体や、取り扱いに注意が必要な電子機器のプリント基板などにも印刷することができます。例えば、ガラス製品やプラスチック製品のプリントに孔版印刷が使われています。
オンデマンド印刷
オンデマンド印刷はこれまで紹介した4つの印刷方式と違って、物理的な版を使用しないデジタル印刷の一種です。オンデマンド印刷の特徴や主な用途を紹介します。
オンデマンド印刷の特徴
デジタル印刷の中でも、必要な量を必要なだけ印刷する方式(=オンデマンド)のことをオンデマンド印刷と呼びます。入稿したデータを直接紙に印刷するため、印刷用の版を製作する手間がかかりません。データを修正すれば、一部ごとにデザインやレイアウトを変えることもできます。
ただし、有版印刷と比べると、オンデマンド印刷はカラーやグラデーション、濃淡表現が苦手です。高い印刷品質を求める場合は、平版印刷や凸版印刷、凹版印刷などの印刷方式を選びましょう。
用途
オンデマンド印刷は、小ロット、短納期で印刷物を製作したい場合に向いています。また名刺やはがきなど、用紙サイズが小さい印刷物にも適しているため、用途に合わせて印刷方式を選びましょう。
■関連記事:【これだけ抑えれば大丈夫】オンデマンドとオフセットの違い、メリット・デメリットや印刷案件ごとの目安を解説
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印刷プロセスの詳細

印刷を依頼する前に、デザインから出来上がりまでの全体の流れを一度確認しておきましょう。
また印刷プロセスは、以下の3つの工程に分類できます。
- プリプレス工程(印刷前工程)
- プレス工程
- ポストプレス工程
それぞれの工程の役割や重要性について知っておくと、印刷会社とやりとりするときに役立ちます。
デザインから印刷までの工程
発注した印刷物が出来上がるまでの工程を順番に並べると、以下のとおりです。
- 印刷物を企画し、方向性を決める
- 印刷物のデザインを制作する
- デザインに問題がないか校正する(校了)
- 印刷に必要な板を製作する(製版)
- 製作した版を使って印刷する
- 印刷物を加工する(断裁加工、折り加工など)
- 完成した印刷物を納品する
印刷物は多くの人が関わり、さまざまな作業を経て完成しています。アナログ印刷もデジタル印刷も基本的な工程は同じですが、オンデマンド方式は版を使用しないため、製版の工程がありません。
製版の工程はイメージしづらいかもしれませんが、金属プレートの版を製作して、印刷物のデザインを焼き付ける工程です。この刷った版のことを刷版(さっぱん)と呼ぶこともあります。
各工程での役割と重要性
印刷工程はプリプレス工程、プレス工程、ポストプレス工程の3つに分けられ、それぞれ作業内容が異なります。
プリプレス工程は印刷前の準備をするための工程で、デザインやレイアウトを考えたり、色見本を見ながらデザインを修正したりする工程です。最終的なデザインが決まったら(=校了)、印刷用の版を製作します。
プレス工程は実際に印刷をする工程です。製作した版を印刷機に取り付けて、事前に決めた方式で印刷を行います。印刷機の調整や用紙の運搬などの作業のため、一台の印刷機に対して、2~3名ほどの印刷オペレーターがつくことが一般的です。
最後の工程はポストプレス工程です。ポストプレス工程では、刷り上がった印刷物(刷本)を製本工場に運搬し、加工します。例えば、二つ折りや三つ折りにする場合、製本用の機械にセットして折り加工を行います。
使用目的別の分類

印刷物は、使用目的によって4つの呼ばれ方をしています。
- 商業印刷
- 事務用印刷
- 出版印刷
- 特殊印刷
印刷物の用途やイメージが決まっている場合は、正しい名称を印刷会社に伝えるとスムーズです。
商業印刷
商業印刷は広告宣伝やブランディングなど、企業が商業的な目的で利用する印刷物を指す言葉です。例えば、チラシやパンフレット、ポスター、店頭のポップ、商品カタログ、マニュアル、社内報などの印刷物が商業印刷に含まれます。
商業印刷はその性質上、たくさんの人の目に触れる必要があることから、低コストで大部数を印刷できる方式が適しています。またデザイン性も求められるため、平版印刷が採用されることが一般的です。
■関連記事:商業印刷とは?商業印刷の基礎知識と今後の展望
事務用印刷
事務用印刷は、伝票、領収書、請求書、帳票、封筒、はがき、名刺など、企業の事務作業に欠かせない印刷物です。領収書や請求書などはフォーマットが決まっており、事務用伝票と呼ばれることもあります。それ以外の名刺や封筒、はがきなどの印刷物は「事務用品」、宅急便の伝票などミシン目がある印刷物は「ビジネスフォーム」と呼んで区別します。
出版印刷
出版印刷は、書籍や雑誌、新聞など、出版社や新聞社が発行する印刷物のことです。定期的に出版されるものは「定期出版(週刊誌や月刊誌など)」、不定期に出版されるものは「不定期出版(新書や単行本など)」と呼んで区別されます。
商業印刷と同様に、出版印刷には平版印刷が採用されることが一般的です。少部数の場合はオンデマンド印刷も適しています。また写真や画像など、色味をしっかりと表現したい場合は凹版印刷もおすすめです。
特殊印刷
金属やガラス、布地など、紙以外に印刷したものは特殊印刷と呼ばれます。例えば、クリアファイルにプリントしたものや、型押し加工をしたカードなどが特殊印刷の代表例です。
まとめ:目的に合わせた印刷方法を選ぶ
印刷を発注するときに知っていると便利なのが、5つの印刷方式です。平版印刷、凸版印刷、凹版印刷、孔版印刷、オンデマンド印刷の違いや、印刷物の仕上がりのイメージを把握しておきましょう。媒体や印刷物の用途に応じて、適切な印刷方式を選ぶことがポイントです。 またデザインから納品までの印刷工程や、使用目的別に見た印刷物の分類などを知っていると、印刷会社の担当者とのやりとりがスムーズになります。印刷の方法や仕組みについて、基礎的な知識を学んでおきましょう。
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