コンテンツマーケティングでよくある悩みの1つが、配信するコンテンツの数が増えるにつれて、画像や写真、音声、動画などのデータ管理が煩雑になってしまう、という問題です。
例えば商品の写真を掲載する場合、配信先がPC向けのWebサイトか、スマートフォン向けのWebサイトかによって、サイズや縦横比、保存形式を変更する必要があります。同じコンテンツであっても、配信先ごとにデータを分けて管理しなければなりません。
こうした手間を省いてくれるのが、デジタルアセットマネジメントと呼ばれる手法です。本記事では、デジタルアセットマネジメントの必要性や導入するメリット、おすすめのデジタルアセットマネジメントシステムを解説します。
目次
デジタルアセットマネジメントとは

デジタルアセットマネジメントとは、英語でDigital Asset Management(DAM)と言い、コンテンツマーケティングに使われるデジタル資産(Digital Asset)を一元管理(Management)するための手法です。
インターネットやスマートフォン、IoTの普及によって、マーケティングにおける顧客接点(タッチポイント)がデジタル化しました。企業はWebサイトやSNS、アプリ、デジタルカタログ、デジタルサイネージなど、さまざまな媒体でコンテンツを発信し、商品やサービスを販促しています。
それに伴い、商品の写真やロゴ、図面、スペック表、キャラクターイラスト、操作説明動画など、管理しなければならないデジタル資産の量が膨大になりました。デジタル資産が増えつづけると、以下のような問題が発生します。
- 配信先に合わせてデジタル資産のサイズを変更したり、保存形式を変換したりするのに手間がかかる
- よく似たデジタル資産がたくさんあり、どのデータが最新のものか分からなくなる
- 各担当者がバラバラにデジタル資産を管理しており、必要なデータを探すのに時間がかかる
- 購入したデジタル資産の有効期限を把握しておらず、著作権に違反した状態でコンテンツを配信している
こうした問題をワンストップで解決できるのが、デジタルアセットマネジメントの強みです。デジタルアセットマネジメントを導入すれば、デジタル資産のバージョンごとの違いも、著作権の有効期限もまとめて管理できます。
クラウドストレージとの違い
デジタル資産を管理するなら、クラウドストレージでも十分だと考える方もいるのではないでしょうか。クラウドストレージは、画像や写真、音声、動画などのデータをクラウド上のストレージに保管し、共有できるサービスです。
しかし、クラウドストレージには、必要なデータを必要なときに探す仕組みがありません。以下の表のとおり、デジタルアセットマネジメントシステムにはファイル名の検索だけでなく、データにメタ情報(属性情報)を付与し、検索する機能があります。また著作権の許諾情報もデータとセットで管理できるため、有効期限が切れたデジタル資産を誤って使用するリスクもありません。
クラウドストレージ |
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デジタルアセットマネジメントシステム |
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デジタルアセットマネジメントシステムは、クラウドストレージよりも販促媒体の制作やコンテンツの配信に適したシステムです。
デジタルアセットマネジメントの必要性

コンテンツマーケティングにおいて、デジタルアセットマネジメントの導入が必要不可欠な理由は2つあります。
- 法人顧客の情報収集のあり方が変わった
- コンプライアンスの遵守がより求められるようになった
法人顧客の情報収集のあり方が変わった
1つ目の理由は、法人顧客の情報収集のあり方が大きく変わったためです。
法人顧客にとって、これまでは紙のカタログが商品やサービスを選定する主な情報源でした。しかし、インターネットやスマートフォン、IoTの普及に伴い、法人顧客は以下のようなデジタルチャネルを通じて、さまざまなソースから情報を収集するようになりました。
【デジタルチャネルの一例】
- Webサイト
- ブログ
- SNS
- アプリ
- ECサイト
- メールマガジン
- デジタルカタログ
- デジタルサイネージ
こうした変化により、企業にとってもデジタルチャネルにおける情報発信の重要性が高まっています。デジタルチャネルにおける発信力を強化するため、増えつづけるデジタル資産を一元管理し、効率的に活用できるデジタルアセットマネジメントが注目されるようになりました。
コンプライアンスの遵守がより求められるようになった
2つ目の理由は、企業のコンプライアンスに対する意識の変化です。
コンテンツの作成に使用するデジタル資産には、ストックフォトサービスで購入したものや、制作会社に依頼したものなど、著作権の有効期限が設定されたものが含まれています。
著作権の管理が不十分だと、有効期限が切れたデジタル資産を広告宣伝に利用してしまい、著作権法違反に当たる恐れがあります。また内部不正やサイバー攻撃などの要因により、他社の著作物であるデジタル資産が外部に流出するリスクにも備えなければなりません。
企業の社会的信用を守るためには、デジタル資産の許諾情報をしっかりと管理し、かつ不正利用を未然に防ぐ仕組みが必要です。そうした背景から、デジタル資産を安全に一元管理できるデジタルアセットマネジメントに関心が集まっています。
デジタルアセットマネジメントのメリット

デジタルアセットマネジメントを導入するメリットは2つあります。
- デジタル資産の一元管理
- 業務効率化による生産性の向上
デジタル資産の一元管理
デジタルアセットマネジメントの導入により、多種多様なデジタル資産を一元管理できます。デジタル資産の加工や編集もシステム内で行えるため、制作したコンテンツの保存場所がバラバラになりません。
また社内の担当者だけでなく、遠方の支店・支社の担当者や、外部のゲストとセキュアにデジタル資産を共有し、コンテンツを制作することも可能です。デジタルアセットマネジメントを活用すれば、「購入したデジタル資産が社内に散在し、どこにあるか分からない」「担当者によってデジタル資産の保存場所が異なり、提供依頼があるたびに対応が遅れる」といった課題を解決できます。
業務効率化による生産性の向上
またデジタルアセットマネジメントを導入すれば、デジタル資産を効率的に活用し、生産性向上を実現できます。
デジタルアセットマネジメントなら、以下の例のように特定のチャネルで使用したデジタル資産を即座に変換し、別のチャネルに流用することが可能です。
- InDesign(DTPソフト)で作成したカタログデータをスマホアプリ向けに変換する
- PC向けWebサイト用の画像をスマートフォン向けに最適化する
- CM向けに制作した動画をトリミングし、SNSキャンペーン用に編集する
デジタルアセットマネジメントは検索機能も充実しているため、過去に制作したコンテンツの中で流用できるものがないか、すばやく検索することも可能です。このようにデジタルアセットマネジメントがある場合とない場合では、担当者の仕事のスピードが大きく変わってきます。
デジタルアセットマネジメントの主な機能

デジタルアセットマネジメントシステムの主な機能は3つあります。
- データにメタ情報を付与する
- データをプレビュー表示する
- データをシステム内で加工する
クラウドストレージのようにデータをアップロードしたり、オンラインで共有したりする機能に加えて、コンテンツマーケティングに役立つさまざまな機能が用意されているのが特徴です。
データにメタ情報を付与する
デジタルアセットマネジメントシステムでは、保存したデジタル資産にさまざまなメタ情報を付与し、分類できます。
【メタ情報の例】
- 商品名/サービス名
- 品番/型番
- 価格
- カラー/季節
- カテゴリ/タグ
- 販売エリア
- 購入元
- 著作権者
メタ情報を利用してデジタル資産を検索できるため、必要なデータを必要なときに見つけることが可能です。また購入元や著作権者などの情報を付与しておけば、デジタル資産と許諾情報を紐付けて管理できます。
データをプレビュー表示する
デジタルアセットマネジメントシステムには、デジタル資産をプレビュー表示する機能もあります。ファイルを開かずに中身を確認できるため、デジタル資産を探すときに便利です。システムによっては、画像や動画だけでなく、InDesignなどのフォーマットに対応しているものもあり、入稿データのプレビュー表示が可能です。
データをシステム内で加工する
デジタルアセットマネジメントシステムなら、デジタル資産の加工や編集も自由自在です。画像や動画のトリミング、保存形式の変換など、システムによってさまざまな編集作業ができます。システム内で全ての編集作業を行えるため、専用ツールを別途導入したり、制作会社に加工を依頼したりする必要がありません。
デジタルアセットマネジメントシステムの活用方法

デジタルアセットマネジメントシステムの主な活用シーンは2つあります。
- コンテンツマーケティングの効率化のため
- マルチチャネルでの情報発信のため
デジタルアセットマネジメントシステムが主に使われているのは、さまざまなデジタルチャネルを通じ、情報を発信するコンテンツマーケティングです。特に従来のクラウドストレージでの素材管理に限界を感じた企業が、デジタルアセットマネジメントシステムを導入しています。
またデジタルアセットマネジメントシステムは、あらゆるメディアで使用するデジタル資産を一元管理できるため、マルチチャネルでの情報発信にも適しています。情報を発信するチャネルを増やしたいが、担当者の業務負担をなるべく抑えたい、という企業はデジタルアセットマネジメントシステムを導入しましょう。
おすすめのデジタルアセットマネジメントシステム

ここでは、デジタル資産の管理に悩んでいる方向けに、おすすめのデジタルアセットマネジメントシステムを2つ紹介します。
費用 | ||
CIERTO/Digital Asset | 月額料金:11万9,000円~(税別) ライセンス費用:380万円~(税別) | 基本料金で1TB(テラバイト)の大容量IllustratorやPhotoshop、InDesignに対応したプレビュー機能 |
Adobe Experience Manager Assets | 要問い合わせ | Creative Cloudと連携可能AIを用いたコンテンツ制作サポート |
CIERTO/Digital Asset
CIERTO/Digital Assetは、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社が提供するDAMです。基本料金で1TB(テラバイト)のデジタル資産を保存でき、容量を圧迫する動画素材もたくさん利用できます。またプレビュー機能は、IllustratorやPhotoshop、InDesignなどに対応しており、さまざまな保存形式の入稿データを表示することが可能です。
Adobe Experience Manager Assets
Adobe Experience Manager Assetsは、Adobe Inc.が提供するDAMです。Creative Cloudのさまざまなアプリと連携し、大量のデジタル資産をAdobe Experience Manager Assets上で一元管理できます。またAIを活用し、背景の加工やトーンの補正、レンダリングといった手間のかかる作業を自動化することが可能です。
【まとめ】デジタル資産を一元管理するデジタルアセットマネジメントの導入を
デジタルアセットマネジメントとは、画像や写真、音声、動画などのデジタル資産を一元管理し、コンテンツマーケティングを効率化する手法です。クラウドストレージと違い、デジタルアセットマネジメントにはデータのプレビュー表示やメタ情報の検索など、豊富な検索手段が用意されています。必要なデジタル資産をすばやく検索し、素材入手にかかる時間を短縮することが可能です。
またデジタルアセットマネジメントなら、デジタル資産と許諾情報をセットで管理できます。有効期限が切れたデジタル資産の誤使用を防ぎ、ブランドマネジメントを強化することが可能です。 コンテンツマーケティングに欠かせないデジタル資産の管理にお悩みなら、デジタルアセットマネジメントシステムを導入しましょう。
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