ユーザーの位置情報を反映した検索結果が表示されるローカル検索において、「MEO」は、このローカル検索が行われた際に、自社の検索結果を上位に表示させるための最適化施策を指します。
企業や店舗、施設にとって新規顧客を獲得し、集客を増やす効果的な手段であるため、MEO対策を行う企業が増えています。本記事では、MEOの概要やSEOとの違い、MEO対策を行うメリットなどについて紹介します。
目次
MEOとは?
MEO(Map Engine Optimization:マップエンジン最適化)とは、文字通り地域や場所に関連したキーワードで検索が行われた際に、自社の検索結果を上位に表示させるための最適化施策です。
Google検索では、スマートフォンなどの機器から取得したユーザーの位置情報を検索結果に反映しています。そのため、地名やエリアを含めずに「パン屋」というキーワードだけで検索しても、現在地付近のパン屋の情報が検索結果の上位に表示されるようになっています。
同時に、現在地周辺の地図と関連する検索結果がページ上部に表示され、さらにカテゴリや評価などのビジネス情報も表示されます。もちろん、場所名をキーワードに含めた場合は、その場所の情報が検索結果に反映されます。
このようにユーザーの位置情報に応じた検索結果を表示する仕組みがローカル(地域情報)検索です。
現在、多くの人がスマートフォンを常に持ち歩き、移動先で行きたい場所や気になる店舗を検索しています。銀座駅に到着したユーザーが「カフェ」と検索したときには、どの場所でもない「銀座」のカフェを探している可能性が高いです。
そのため、Googleではユーザーの利用意図を汲んだ結果を表示できるよう、2010年代から位置情報を用いたローカル検索を強化しています。 それにともない、自社のビジネス情報を検索結果の上位に表示させるためにMEO対策に取り組む企業が増えてきました。
MEOとSEOの違い
MEOと類似した概念として、SEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)があります。
SEOは特定のキーワードで検索した際に、Googleの検索結果で上位に表示されるようにさまざまな施策を行うことです。SEO対策は、自社の商品・サービスの認知度向上やブランディング、集客アップによる売上向上などを期待して行われます。具体的なSEO対策としては、検索意図に応えるようなコンテンツを豊富に用意すること、スマートフォンでも見やすいレイアウトへの対応、クローラーと呼ばれるロボットが内容を理解しやすいように適切な設定を行うことなどがあります。
MEOは、ローカル検索に特化したSEOという位置付けで、SEOに包含される概念です。サービスの認知度向上や集客アップによる売上向上といった目的はSEOと同様ですが、通常のSEO対策とは異なるMEO独自の手法や対策が必要です。具体的には、Googleビジネスプロフィールにビジネス情報を追加し、ユーザーからの優良な口コミを蓄積することが挙げられます(Googleビジネスプロフィールについては後述しますので、そちらをご覧ください)。
また、SEOとMEOとの大きな違いは、対策を行う対象が異なることです。SEOは、基本的に自社が運営するWebサイトを対象にさまざまな対策を行います。一方、MEOは自社のWebサイトではなく、基本的には企業・店舗・施設がGoogle上に登録するGoogleビジネスプロフィールを対象に対策します。
ローカル検索では、Webサイト情報よりも上部に地図とGoogleビジネスプロフィールの登録情報が表示されることが増えています。検索結果の上部に表示されるため、ユーザーはWebサイトの情報は見ずに、Googleビジネスプロフィールの登録情報だけを見てクリックするか否かを判断する機会が増えると考えられます。
ローカル検索で認知度向上や集客を考えるのであれば、Googleビジネスプロフィールの情報が重要になるということです。ローカル検索は、検索エンジンを利用するユーザーにとって、複数の検索結果リンクをクリックしなくても知りたい情報が手に入るため、利便性が高い仕組みです。しかし、Webサイトを運営する企業・店舗・施設にとっては、従来のSEOとは異なる対策が必要になる点で大きな影響があります。
もう一つの違いは認知度です。SEOは早くから対策の重要性が広く認識されており、ほとんどのWebサイト運営企業が取り組んでいます。一方MEOは、SEOほど認知度や注目度が高くないため、対策に取り組んでいる企業もSEOに比べれば、数はまだ少ないです。
MEOのメリット
ユーザーにとって、ローカル検索は自分が今いるエリアの店舗・施設の情報を表示してくれる便利な仕組みです。また、企業にとってもローカル検索には多くのメリットがあり、手間をかけてMEOを行う価値があります。多額の広告費をかけずに無料ではじめられる点は大きな魅力です。
企業がMEO対策を行う主なメリットは、以下の3つです。
メリット①:競合が少なくユーザーの目に留まりやすい
前述の通り、SEOと比べてMEOは対策を行っている企業が少ないマーケティング施策です。言い換えると、いくつかの基本的な対策を行うだけで効果が出やすい施策だということです。SEO対策が検索意図の分析やタグの最適化、いくつものコンテンツ作成を必要とすることを考えると、大きな違いがあります。
通常検索と比較しても、競合が少ない点はメリットです。ローカル検索の対象は同じ地域の企業・店舗・施設になるため、通常検索での対象よりも圧倒的に数が少なくなります。
さらにMEOはローカル検索での表示を最適化する取り組みですが、MEO対策の成果は通常検索の結果にも影響します。Google検索を行う際に、店舗や施設に関連するキーワードが含まれる場合は地図が検索結果に表示されるため、SEO対策のひとつとしても効果が期待できます。
メリット②:来来店見込みの高いユーザーへの集客効果
ローカル検索を使って情報を探しているユーザーは、その場所の近くにいて来店意欲が高く、実際に足を運ぶ可能性が高いです。現在地に近い場所に求めている店舗・施設があれば、そこへ行く確率は高いと考えられます。そのためMEOは高い集客効果が期待できます。
メリット③:口コミや★評価による差別化
店舗・施設情報をGoogleビジネスプロフィールに登録すると、ユーザーから口コミを投稿してもらえます。プラス評価の口コミや高い★評価が多く投稿されることで、MEOによい影響を与えます。
さらにGoogleビジネスプロフィール上によい口コミや評価が多ければ、それを見たユーザーからの信頼度は向上し、来店意欲が高まるといった効果が期待できます。ユーザーからの口コミが投稿されたら、なるべく早めに返信するなどの対応も重要です。
MEOのデメリット
ローカル検索で多くの効果が期待できるMEOですが、注意すべきデメリットも存在します。MEOのメリットとデメリットを考慮したうえで、自社で取り組むかどうかを検討するとよいでしょう。
デメリット①:対策できるビジネスに限りがある
MEOは位置情報を含む検索結果を上位に表示させるための手法です。そのため、実店舗を持たない企業や、顧客と対面で接客を行わないEC事業者などはMEO対策の効果がありません(宅配フードサービスは除く)。また、ユーザーから口コミが投稿されにくい企業も大きな効果は期待できません。
デメリット②:ネガティブな口コミや★評価を受ける可能性がある
口コミの蓄積はMEO対策として効果的ですが、プラス評価だけではなく、時にはマイナス評価を受ける可能性も考慮しておく必要があります。マイナス評価が多く集まるとユーザーが離れてしまうため注意が必要ですが、店舗・施設側では口コミのコントロールができません。
そのため、常に丁寧な接客を心がけ、利用客からよい評価を得られるように努力することが重要です。万が一マイナス評価の口コミが投稿された場合には、早めにお詫びの言葉を返信したり、ユーザーの不満に対して改善策を提示したりするなどのフォローが必要です。
具体的なMEO対策
代表的なMEO対策としては、「Googleビジネスプロフィール(旧Googleマイビジネス)」に情報を登録し、最新情報が掲載されるよう更新することが挙げられます。Googleビジネスプロフィールとは、Googleがビジネスオーナー向けに無料で提供しているサービスで、企業・店舗・施設などの情報を登録することで、Google検索やGoogleマップに表示されるようになります。
ユーザーにとっては、画面の上部に表示されるため視認性が高く、評価や住所、連絡先といった知りたい情報が検索結果画面上ですぐに見つけられるというメリットがあります。企業・店舗・施設にとっては、自社の情報を簡潔にユーザーに伝えられることや無料で利用できること、登録するだけで集客効果や認知度アップが見込めるといったメリットがあります。小規模店舗などで自社Webサイトがない場合は、Googleビジネスプロフィールに登録する際に、オプションで簡易的なWebサイトを作成できます。
MEO対策としてGoogleビジネスプロフィールを運用するのであれば、適切な設定を行うことで、より高い効果が期待できます。
次にMEO対策の基本的な流れとして、「Googleビジネスプロフィールを登録する」→「口コミを増やす」→「最新情報を投稿する」際の具体的な作業を紹介します。
Googleビジネスプロフィールへの登録
まずはGoogleビジネスプロフィールに登録します。Googleビジネスプロフィールは、企業・店舗・施設の当事者だけでなく、第三者でも登録することが可能です。自動収集した情報からGoogleが作成することもあります。登録の前に、既存登録がないかGoogleマップ上で確認しておくことをおすすめします。
すでに登録がある場合は、該当ビジネスのオーナーであることを示した上で情報を更新します。既存登録がない場合は、新規に作成します。
具体的には以下の情報を登録します。
【ビジネス名】
企業名、店舗・施設名を登録します。ここで登録した名称は、オーナー確認で用いられるため、正確に入力する必要があります。登録商標マークは使用できません。
【カテゴリ】
メインカテゴリとして1個、サブカテゴリとして9個のキーワードを設定できます。くわしくは後述します。
【住所】
企業・店舗・施設の所在地を登録します。ビルの階数や施設の番号などがある場合は、略さずに登録してください。ここで登録した住所は、オーナー確認で用いられるため、正確に入力する必要があります。
【電話番号またはWebサイトのURL】
ユーザーの連絡先となる情報です。直通の電話番号や公式サイトのURLを登録します。
【営業時間】
通常の営業時間と、祝祭日や特定の日の特別営業時間を指定することが可能です。ユーザーが利用できる時間を設定するため、例えばレストランであれば、実際に来店客が食事できる時間、銀行であれば、窓口の営業時間を設定します。
【写真】
企業・店舗・施設の写真をJPEGまたはPNG形式(最大5MB・推奨解像度720×720px)で登録します。動画(最大30秒、75MB以下)も掲載可能です。最近では、店舗・施設の内部の360度写真を登録しているケースも見られます。カフェのメニューが知りたい、ホテルの宿泊前に部屋の雰囲気を知りたいといった場合に、写真が充実しているとユーザーが検討しやすくなります。
【ビジネス情報】
提供しているサービス・商品などの情報を全角375文字以下で登録できます。「今ならセールで30%オフ」といった特別料金やキャンペーンを強調する文言は使用できません。
なお、新規で作成する場合も、オーナー確認は必要です。電話、メール、テキストメッセージ、ハガキ、ライブビデオチャット、録画などの選択肢からひとつ選び、Googleビジネス プロフィール上で申請します。
メッセージ機能の設定
Googleビジネスプロフィールでは、チャットでユーザーからの質問に回答できるメッセージ機能が搭載されています。ユーザーと直接コミュニケーションが取れるほか、夜間や土日などの営業時間外での問い合わせの受付やよくある質問(FAQ)の設定ができるなどのメリットがあります。
SNSの公式アカウントを運用していない企業・店舗でも、ユーザーとの接点を持つことができるため、集客効果や顧客満足度の向上につなげられるでしょう。メッセージ機能のオン・オフはいつでも設定可能なため、必要に応じて利用することをおすすめします。
NAP情報の登録
NAP情報とは、Name(企業・店舗・施設名)、Address(住所)、Phone(電話番号)の頭文字を取ったもので、企業・店舗・施設の連絡先情報のことです。ほかのWebサイトやSNSにどれだけNAP情報が記載されているか、また記載されている情報が正しいか、記載されている情報は正しいものに統一されているのかといったことを判断基準にして、Googleが評価を行います。評価をよくするには、NAP情報の登録を増やすとともに、正確で統一された情報にすることが重要です。
自社WebサイトやGoogleビジネスプロフィール以外でNAP情報を登録する手段としては、SNSや口コミサイト、グルメ・美容系ポータルサイトなどを利用する方法があります。具体的には、Facebookページや食べログなどに記載されるNAP情報を正確に登録していくことがMEO対策になります。細かな部分ですが、「株式会社●×」と「(株)●×」、「一丁目1番地」と「1-1」のような表記ゆれを統一することで評価が高くなる可能性があります。
適切なカテゴリ設定
Googleビジネスプロフィールでは、自社のビジネスに関連したキーワードを登録できます。複数の事業を行っている場合には、中心となる事業内容に合わせたカテゴリを選択します。ここで複数カテゴリを選択した場合は、1番目の欄の内容がメインカテゴリになります。
また、業種によっては特別な機能が提供されています。例えば「ホテル」であれば、ホテル評価やアメニティの情報、チェックイン・チェックアウト時刻を検索結果に表示させることができます。「飲食店」であれば、メニューの品目を追加できます。
良い口コミを増やす
ユーザーからの好意的な口コミは、MEO対策としてよい影響を与えるだけでなく、それを見たユーザーにプラスの印象を与えます。口コミの数や、口コミが「役に立った」と評価した人の数が多いと評価の信頼性も高まります。よりよい評価、プラスの印象につなげるためには、ユーザーから投稿されたプラスの口コミに対して、なるべく早くお礼を返信するといったコミュニケーションも重要になるでしょう。
優良な口コミは、新規顧客を獲得する手段としても役立ちます。ユーザーとの関係を良好に保ち、多くの好意的な口コミを獲得するための施策は企業・店舗・施設にとって欠かせません。
最新情報の投稿
Googleは情報の鮮度も考慮しています。自社ビジネスに関連性の高いキーワードで検索された場合でも、登録情報が古いと自社の情報が表示されない場合があります。そのためGoogleビジネスプロフィールの情報を定期的に更新し、鮮度の高い内容を維持することが重要です。
最新情報への更新はユーザーのためでもあります。例えば、営業時間の変更や臨時休業などの情報を更新しないままだった場合、Googleビジネスプロフィールに記載してある営業時間を見て訪問したユーザーが、実際に店頭まで来てはじめて臨時休業であることを知るようなことになれば、店舗への信頼を損ねる可能性があります。
また夏季のみ営業時間を20時までに延長している店舗があったとき、Googleビジネスプロフィール上は通年営業時間の19時閉店のままの記載だとしたら、ユーザーの来店機会を失う可能性があります。ユーザーの信頼・評価は口コミなどに影響します。ユーザー視点に立った情報更新を行うことが大切です。
MEOの評価ポイント
Googleは、ユーザーがローカル検索を行った際に、検索キーワードとの関連性、距離、視認性の高さ(知名度)など、複数の要素を組み合わせて評価します。ただ「現在地との距離が非常に近い」など、いずれかひとつの要素が突出していたとしても、必ずしも最上位に表示されるわけではありません。単純な一面的評価ではなく、あくまで複合的に評価されます。
関連性、距離、視認性の高さ(知名度)の3つの評価ポイントのうち、Googleビジネスプロフィールの登録内容が影響するのは関連性のみです。
検索キーワードとの関連性
ユーザーが検索するキーワードとビジネスの関連性が高いほうが上位表示に有利です。登録されている情報が多ければ、それだけキーワードと一致しやすくなります。関連性を高めるためにはGoogleビジネスプロフィールの登録内容を充実させることが重要です。
Googleビジネス プロフィールでは、一定期間内にページを閲覧したユーザー数やデバイス・プラットフォーム比率、ビジネス プロフィール表示につながった検索キーワード、Webサイトのクリック数などを確認することが可能です。それらの情報を確認しながら、よりよいパフォーマンスが出せるように改善していくことをおすすめします。
検索された場所から店舗までの距離
検索を行っているユーザーのスマートフォンなどから取得した位置情報から、実際の店舗・施設までの距離が近いほうが有利です。検索キーワードで場所が指定されている場合は、そこからの距離が用いられます。ただ距離に関しては対策のしようがないため、特に気にする必要はありません。
視認性の高さ(知名度)
インターネット上での視認性が高い(知名度が高い)と、ローカル検索で上位に表示されやすくなります。インターネット上の視認性とは、SNSで話題になることで多くの人が店舗・施設の情報を目にしたり、他のWebサイトで店舗名などが紹介されてリンクが張られることです。
それだけでなくオフラインでの知名度も検索上位に表示されることに関係します。有名なパティシエが手掛けるケーキ屋や、誰もが知っている老舗レストランなど、知名度が高いブランド・店舗は上位に表示されやすくなります。
まとめ
位置情報にもとづくローカル検索は、訪問の可能性が高いユーザーを集客する手段として重要です。位置情報を使った広告を活用することも可能ですが、MEOは無料で取り組むことができ、効果も期待できるため、実店舗を持つ企業は取り組むべき施策のひとつです。SEOと同じように長期的な視点で取り組むことをおすすめします。
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