企業や団体が顧客や会員との関係を維持する際に、ダイレクトメールやチラシなどが用いられます。これら以外にも、役立つツールが会報誌です。
会報誌は会員でないと読むことができないため、ブランド力の強化などさまざまなメリットがあります。しかし、会報誌は発行することばかりを意識してしまうと、マンネリ化して関係性の深化にはつながりません。
本記事では、会報誌を発行するメリットや制作の流れ、制作時のポイントなどを解説します。
目次
会報誌とは
会報誌とは、何かしらの会に所属している人に向けて発行する冊子を指します。企業や学校、行政といったさまざまな団体が会報誌を発行しています。
一般的なイメージは、クレジットカード会社が発行している会員向けの冊子やタレントやアイドルのファンクラブ会員向けに発行している冊子が近いかと思います。
会報誌と似たような冊子として、広報誌、社内誌(社内報)がありますが、それぞれの違いは次のとおりです。
上記のとおり、広報誌はある団体が活動や社会貢献の状況などを伝えることを目的に、不特定多数の読者に発信しています。
一方、社内誌(社内報)は企業が自社に勤める従業員を対象に、自社の課題や取り組みを共有することが目的です。
会報誌作成のメリット
会報誌を作成するメリットは大きく次の3つです。
● ブランド力を強化できる
● クロスセルを高める機会を作れる
1. 会員と関係を深められる
会員との関係を深められるということが、会報誌発行の目的であり、メリットでもあります。
たとえば、企業が顧客に向けて、厳選した情報を載せた会報誌を発行することで、ロイヤルカスタマーの獲得につながります。また、学校や行政も会報誌を発行することで関係者に有益な情報を届けることが可能です。
顔を合わせることが少ない顧客や会員、関係者だからこそ、定期的に情報を発信してコミュニケーションを図るようにしましょう。
2. ブランド力を強化できる
ブランド力を強化できるのも会報誌を発行するメリットです。会報誌の構成や企画に注力することで、他社や他団体にはない魅力を伝えられます。
たとえば、ハイブランド商品の会報誌であれば、商品の情報だけでなく、愛用している著名人のインタビューを掲載することで、ブランド力をより強化できます。
3. クロスセルを高める機会を作れる
クロスセルとは、顧客に購入予定の商品以外の商品も提案して、購入を検討してもらうことです。
会報誌を発行することで売りたい商品や、おすすめしたいサービスを会員に直接伝えられます。そのため、クロスセルを高める機会につながります。
たとえば、マットレス商品の紹介ページの中に、羽毛布団やベッドサイドのランプなど同じシーンで使用することが見込まれる商品を紹介し、販売機会を作ったりします。
会報誌制作の流れ
会報誌を制作するとなったら、次のような流れで進行していきましょう。
コンセプトの策定
会報誌の制作前にコンセプトを策定しましょう。たとえば、健康グッズやサプリメントの通信販売で会報誌を制作するのであれば、「健康への興味を持ってもらう」や「顧客が元気になるような会報誌にする」といったコンセプトが挙げられます。
このように会報誌のコンセプトを策定する場合は、事業や団体の特徴とリンクさせるのがおすすめです。
目的・役割の定義
誰に何を届けるのかといった会報誌の目的と役割を定義しておきます。その際はペルソナを意識しましょう。
ペルソナはターゲットよりも具体的で、サービスの中心となる顧客像といえます。ペルソナを設定する際は次のような項目を埋めていきます。
● 基本情報(性別、年齢、居住地など)
● 職業
● 世帯年収
● 人間関係(恋人・配偶者・子供の有無、家族構成)
● 生活パターン(平日の過ごし方、休日の過ごし方)
● 価値観
ペルソナが明確になったら、想定する顧客が興味・関心を持っていそうな話題や情報を届けることを目的に会報誌制作を進めていきましょう。
年間スケジュール策定
会報誌を年に何号発行するかは企業や団体によって異なります。しかし、何号発行するにしても、遅延が発生しないように年間のスケジュールを策定しましょう。
スケジュールを策定する際は、会報誌を配布する予定日から逆算するのが一般的です。年間何号発行するか、どれくらいのスケジュールで発行するのかは、類似会報誌の年間スケジュールを参考にするのもおすすめです。
企画の立案
前述したように会報誌には、企業や団体のブランド力を高める、クロスセルを高めるといったメリットがあります。しかし、このメリットを得ようとして、自社や自団体の宣伝、押し売りになってしまっては会報誌の本来の目的を果たせません。
会報誌を発行する目的である「会員との関係を深める」ために、読者目線に立った企画を立案しましょう。ただし、単なる読み物にしないためにも、読者が求める情報について、発行者のフィルターを通じて提供する企画を立案することが重要です。
また、心理学マーケティングを活かしたコンテンツを盛り込むのもおすすめです。具体的には次のような例が挙げられます。
原稿依頼・取材依頼
会報誌に掲載する情報は全て自前で揃えられないケースがあります。その際には外部の方へ依頼をすることもあります。
会報誌に掲載する原稿や、取材を依頼する際は事前の相談が大切です。原稿依頼・取材依頼を予定している方に、事前の打診もなしに依頼書を提出してしまっては礼を欠いてしまいます。
事前に対応可能かを確認して、承諾を得られたら原稿や取材を依頼しましょう。原稿や取材を依頼する際は「〇〇について」といったような、ざっくりとしたテーマは避けて、具体的なテーマを提示することが大切です。
また、原稿を依頼する際は、次の点も漏れなく伝えておきましょう。
● 文字数
● 提出方法(テキストファイルか手書きか)
● 締切日
締切日は余裕をもって設定しておくのがおすすめです。
取材・撮影の実施
取材として対象者にインタビューする場合、明確なテーマを用意し、質問事項もなるべく多く準備しておきましょう。取材当日に質問されては、回答に詰まってしまい、十分な取材が行えない可能性があるため、事前に取材対象者に質問事項を共有しておくことも大切です。また、取材対象者についての知識を前もって把握しておくことも怠らないようにしましょう。
撮影は取材対象者が話している様子やイベントに参加している様子、笑顔の一枚などを収めるのがおすすめです。
原稿制作・文章ライティング
原稿制作・文章ライティングでは逆三角形を意識しましょう。原稿内で伝えたいこと、ポイントとなることを先頭に持ってきます。
読者が最後まで読んでくれるとは限りません。そのため、読者が後半まで読まなかった場合に備えて、冒頭に原稿内のポイントを持ってくるようにしましょう。
編集・構成・画像補正
編集作業として完成した原稿をチェックして、情報が足りない、テーマとずれているといったように修正の必要があれば原稿作成者に修正を依頼します。また、集まった原稿をどのように誌面に載せるかといった全体の構成を考える必要もあります。
原稿だけでなく、撮影された写真を確認して誌面に掲載する写真を選定しましょう。必要であれば、画像補正も行います。
デザイン制作
会報誌をより魅力的にするには、デザインが重要です。表紙のデザインだけでなく、見出しや本文のフォント、フォントサイズ、さらにはイラストなど読者が読みやすいデザインを心がけましょう。
校正・修正作業・校閲
文章に誤字脱字がないかを校正作業でチェックします。校正作業は声に出して読み上げるだけでなく、プリントアウトしてチェックしましょう。とくに全角半角の表記ルールがある場合、プリントアウトしたほうが校正作業をしやすくなります。
また、校閲では内容に事実誤認がないか、倫理的に問題ないかなどを確認します。校正・校閲で修正の必要があると判断された場合、修正作業を行います。
関連記事:校正の役割とは?校閲との違いや重要な理由を印刷会社が解説!
色校正・印刷・発送
色校正で印刷物の色合いがイメージに近いかを確認します。パソコンのディスプレイで見る色合いが印刷した際にも出るわけではありません。
そのため、色校正は欠かせない作業です。色校正には大きく次の3つの方法があります。
● 本機色校正:本番とほぼ同じ状態で確認できるがコストと時間がかかる
● 本紙色校正:本機色校正よりはコストを抑えられるが再現性は劣る
● 簡易色校正:低コストで色校正可能だが本番とは色が多少異なる
こちらは色の再現性をどこまで求めるかで判断をされると良いでしょう。また、予算やページ数なども考慮に入れると良いでしょう。
色校正については「【色について】RGBとCMYKの違いとは?特徴や変換方法なども解説!」の中でも解説しているので、合わせてご覧ください。
文字と色の確認が完了したら、印刷工程へと進みます。
印刷工程を終えたら、封入作業を経て、会員のもとに発送されます。クロスセルを意識される場合は、他の印刷物などを同梱するのもおすすめです。
会報誌を制作する際のポイント
会報誌は次のようなポイントを押さえて制作します。
● 読者に有益(貴重)な情報を提供する
● デジタル接点も設ける
● 読者の声を載せる
1. 読みやすさを意識する
読者が読みやすい誌面構成・デザイン・レイアウトを意識しましょう。たとえば、画像だけでなく、図解のイラストを挿入することで、文章の理解度をグッと高めることができます。
また、キャッチコピーの設定も読みやすさという点では重要です。読み手の心理を意識することで、最初に目に飛び込んでくるキャッチコピーで心を掴めます。
2. 読者に有益(貴重)な情報を提供する
会報誌の目的である、会員との関係性を深めるためには、読者に有益(貴重)な情報を提供することが大切です。学びにつながるコンテンツや有識者へのインタビューなどを掲載することで、そこでしか知れない貴重な情報を提供できます。
自社や自団体の押し売りだけにならないように注意しましょう。
3. デジタル接点も設ける
近年は、会報誌のデジタルブック版を作成している会社が増えています。デジタルブックの会報誌を作成し、企業や団体のホームページ・SNSに掲載することで、読者もアクセスしやすくなり、自社商品やサービスなどの認知度を高められます。
またアクセス解析などを行うことで、今後の誌面作りにも役立てることができるでしょう。
さらに、会報誌のデジタルブック版を作成することで、印刷部数の削減や会報誌の保管、発送が不要となり、コストの削減につなげられます。
4. 読者の声を載せる
会員との関係性を深めるためにも、読者の声を掲載するのがおすすめです。読者へのインタビューや読者からの投稿を掲載することで、双方向のコミュニケーションが生まれ、読者との関係性を深められます。
まとめ:会報誌制作で会員との関係性を深めよう
会報誌を制作することで、会員との関係性を深められます。また、自社や自団体のブランド力の強化、クロスセルの機会向上にもつながります。
会報誌を制作する際は商品やサービスを打ち出し過ぎるのではなく、読者が求める企画を展開していきましょう。
会報誌は紙だけでなくデジタルブック版として作成することで、企業や団体のホームページ・SNSに掲載でき、そのことで読者もアクセスしやすくなり、より関係を深められます。
また、「紙媒体の有効性について知りたい」という方は、各調査データに基づいて解説している資料を下記からダウンロードできますので、ぜひご覧ください。