印刷用紙の種類と用途にあわせた用紙の選び方

印刷用紙の種類と用途にあわせた用紙の選び方
2024年5月28日
印刷・デザイン

名刺やポスターなど、さまざまな印刷物を作成する際、意識すべきなのは文章や写真、デザインだけではありません。どのような印刷用紙にプリントするのかも意識しましょう。印刷用紙にはさまざまな種類があるため、印刷物に適したものを選ぶことが大切です。

本記事では、印刷用紙の種類や用途別におすすめの印刷物について解説します。

印刷用紙の種類について

印刷用紙には次のような種類があります。

  • コート紙
  • マットコート紙
  • 上質紙
  • 特殊紙

コート紙

コート紙とは、紙の表面にコート剤を塗った印刷用紙です。コート剤が塗られているため、表面がなめらかで光沢がある点が特徴です。

コート紙は写真やイラストの再現性に長けているため、ポスターや雑誌の表紙などに用いられる傾向にあります。一方、表面がなめらかで滑るため、アンケート用紙のように何か文字を書き込む用紙としては適していません。

マットコート紙

表面がなめらかで光沢のあるコート紙に対して、表面の光沢が抑えられているのがマットコート紙です。これはツヤを消すコーティングが施されているためです。

光沢が抑えられているぶん、文字を書き込んだり読んだりしやすく、パンフレットやカタログなどに用いられる傾向にあります。

マットコート紙はさまざまな場面で用いられるものの、屋外での使用には適していません。耐水性には長けていないため、屋外で雨に濡れると劣化してしまいます。

上質紙

上質紙はノートやプリントなど、身近な印刷物に使われる印刷用紙です。コート紙、マットコート紙と異なり、加工が施されていないため、文字をメインとした印刷物やページをめくることの多い印刷物などに適しています。上質紙の中でも特に白さが強調されているものが最高級上質紙です。

上質紙は文字がくっきりと見えるものの、カラーインクのノリが悪いため、写真やイラストの再現性には劣ります。

特殊紙

特殊紙は凹凸加工をはじめ、さまざまな加工が施された紙です。例えば、商品のパッケージやケースに用いられるコートボール紙は特殊紙の1つです。コートボール紙は表面がなめらかな加工が施されているため、フルカラーの印刷に適しています。

コートボール紙以外の主な特殊紙は、以下のとおりです。

特殊紙の種類特徴用途
マーメイド紙凹凸加工が施されている工作や画材、本の装丁など
キャストコート紙鏡の表面のような光沢とツヤがあるポストカードやシールなど
ユポ紙水、油に強く破れにくい飲食店のメニューやポップなど
タント紙凹凸のあるエンボス加工が施されているカレンダーやカタログなど
ミランダ紙ラメが施されている化粧品やブライダル関係など
ヴァンヌーボ紙手触りに凹凸感がある写真集や画集など
シープスキン紙羊皮紙を再現している書籍の遊び紙など
グラシン紙シャリっとした触感がある紙風船やケーキの型紙など

特殊紙は特別な雰囲気やオリジナリティを演出できる一方で、加工が施されているぶんコストがかさみやすいという特徴があります。

ここではそれぞれの特殊紙について詳しく解説します。

コートボール紙

先述のとおり、コートボール紙は商品のパッケージやケースに用いられる特殊紙で、板紙の一種です。板紙とは厚手の紙を指します。例えばティッシュ箱に用いられているのがコートボール紙です。

コートボール紙であれば安価でパッケージやケースを製作できます。しかし、コートボール紙の裏面はネズミ色になってしまうため、高級感に欠けてしまいます。

マーメイド紙

マーメイド紙は、手触りが軽く、柔らかい風合いであることが特徴です。フェルトマークと呼ばれる模様があり、手に取った人、見た人に優しい印象を残せます。ただし、表面にコーティングが施されていないため、カラー印刷には適していません。

キャストコート紙

表面に強い光沢があるのがキャストコート紙です。キャストコート紙は、コート紙と同じく表面に加工を施しています。キャストドラムによってプレスされることで、さらに光沢が強くなっていることが特徴です。

キャストコート紙に印刷をすると、表面の強い光沢が薄らぎ、印刷部分と印刷していない部分との差が目立ちやすくなります。印刷部分と印刷していない部分の差を埋めるには、ポリプロピレン製のフィルムを貼る必要があります。ただし、ポリプロピレン製フィルムを貼るとコストがかさんでしまうという点がデメリットです。

ユポ紙

紙とプラスチックフィルム、それぞれの特徴を併せ持っているのがユポ紙です。ユポ紙は撥水・耐水性に長けているだけではなく、油や薬品などにも強い耐性があります。

高い耐久性がある一方で、できる印刷加工は限られています。例えば折り曲げ加工には適していません。また、印刷できる印刷機が限定される、コストが高くなるといったデメリットも挙げられます。

タント紙

タント紙の「タント」とはイタリア語で「たくさん」という意味です。その名のとおり、タント紙のカラーバリエーションは多様であり、高級感を醸し出すのに適しています。

タント紙はエンボス加工が施されている上にカラーもあるため、コストがかかりやすい傾向にあります。

ミランダ紙

華やかなラメがあしらわれた特殊紙がミランダ紙です。化粧品の包装やブライダル関係、ショップカードなどに用いられています。

ヴァンヌーボ紙

一般的に特殊紙は施されたコーティングによってインクのノリが悪くなる傾向にあります。しかし、ヴァンヌーボ紙は独特の風合いとインクのノリを両立させた特殊紙です。

シープスキン紙

羊の皮からなる羊皮紙を思わせる特殊紙がシープスキン紙です。シープスキン紙は半透明のため、書籍の表紙と本文の間にある遊び紙などに活用されています。

グラシン紙

グラシン紙は、薄く滑りが良い手触りが特徴の特殊紙です。油や水に強いため、食品の包装に使われています。薬品の包装紙としてグラシン紙を見かけることもあるでしょう。

用途にあった印刷用紙の選び方

先述のように、印刷用紙にはさまざまな種類があります。そのため、印刷物を作成する際は用途にあった印刷用紙を選ぶことがポイントです。

ここでは次のような用途に適した印刷用紙の選び方を解説します。

  • 名刺やカード
  • パンフレット
  • チラシ
  • ポスター
  • カタログ
  • DM
  • 書類や報告書

名刺やカードにおすすめの用紙

名刺やカードにおすすめの用紙はマットコート紙です。マットコート紙であれば触れたときの感触や発色に違和感がないため、相手に品の良い印象を与えられるでしょう。

一方、名刺に自分の写真や企業のロゴなどを使用している場合はコート紙が適しています。コート紙は発色が良いため、写真をより鮮明に印刷できるでしょう。

職業や企業のイメージによっては特殊紙の使用もおすすめです。例えば、ヴァンヌーボ紙であれば高級感を演出できるでしょう。ヴァンヌーボ紙のような温かみのある高級感ではなく、無機質でモダンな高級感を演出するのであれば、最高級上質紙がおすすめです。

パンフレットにおすすめの用紙

パンフレットにおすすめの印刷用紙はコート紙もしくはマットコート紙です。コート紙は、写真やイラストの再現性が高い点が特徴です。パンフレットに掲載されている写真やイラストも読み手にはっきりと伝わるでしょう。

一方でコート紙は書き込みしにくいというデメリットがあります。このようなデメリットを解消したい場合には、書き込みしやすいマットコート紙を採用することをおすすめします。

配布するパンフレットの種類や場面に応じて読み手が文字を書き込むことがあるのかどうかを判断して、適した印刷用紙を選択しましょう。

コート紙、マットコート紙に対して、パンフレットの印刷に適さない用紙が上質紙です。上質紙は表面に加工が施されていないため、写真やイラストの鮮やかさを再現しづらくなります。

チラシにおすすめの用紙

チラシにおすすめなのは次の3つの印刷用紙です。

印刷用紙の種類チラシの種類
コート紙写真やイラストを多用している
マットコート紙白を多く使用している
上質紙文字が多い

コート紙は発色が良く写真やイラストの再現性が高いため、写真やイラストを多用しているチラシに適しています。チラシとして広く見かける新聞の折り込みに用いられているのもコート紙が一般的です。

コート紙よりも発色は抑えられてしまうものの、高級感を演出するのであれば白い部分を綺麗に表現できるマットコート紙もおすすめです。また、コート紙ほど紙が光を反射しないため、文字が読みやすい傾向にあります。

文字の読みやすさを優先するのであれば、上質紙もよいでしょう。上質紙は写真やイラストを鮮やかに再現することには不向きなものの、光の反射が抑えられるため文字が多いチラシには向いています。

ポスターにおすすめの用紙

ポスターの重要な役割は、周囲の人に見てもらうことです。人の目を引くという点ではコート紙がおすすめです。コート紙であれば、発色の鮮やかなポスターを安価で印刷できるでしょう。

落ち着いた雰囲気や視認性の高いポスターを希望するのであれば、マット加工が施されたマットコート紙がおすすめです。なお、コート紙もマットコート紙も室外に掲示すると雨や温度・湿度の影響で劣化しやすくなるため、室内にポスターを掲示する場合に採用しましょう。

室外に掲示するのであれば、ユポ紙の使用がおすすめです。ユポ紙は水に強いため、室外で使用するポスターにも適しています。発色も鮮やかになりますが、コート紙やマットコート紙よりも費用がかさみやすいことに注意しましょう。

カタログにおすすめの用紙

カタログもパンフレットと同じく、コート紙もしくはマットコート紙がおすすめです。カタログはパンフレットよりも画像が多くなる傾向にあるため、発色が鮮やかなコート紙、マットコート紙の使用を検討してみましょう。

カタログは掲載された商品を見ながら読み手が文字を書き込む可能性もあります。文字の書き込みに対応するにはマットコート紙がおすすめです。

DMにおすすめの用紙

DMに用いられる印刷用紙は一般的に次の3つです。

  • 上質紙
  • コート紙
  • マットコート紙

上質紙は文章がくっきりと見えるため、手書き風をはじめとして文章をメインにしたDMに適しています。文章はくっきりと見えるものの、写真やイラストは映えない傾向にあります。

写真やイラストをメインに据えるのであれば、コート紙やマットコート紙を選択しましょう。コート紙、マットコート紙は特別感も演出できるため、クーポンを添えたDMに適しています。

特別感を重視するのであれば、特殊紙を使用するのもおすすめです。例えばヴァンヌーボ紙は凹凸があり独特の風合いも醸し出せます。印刷のノリもよく、写真やイラストをくっきりと印刷できるでしょう。自社のブランド愛が強い顧客やリピーターへのDM、誕生日の顧客へのDMなど、特別なDMであればヴァンヌーボ紙をはじめとした特殊紙がおすすめです。

書類や報告書におすすめの用紙

仕事で作成する書類や報告書には上質紙がおすすめです。上質紙は文章がくっきりと印刷できるため、ビジネスシーンで活用できる印刷用紙です。上質紙であればペンで直接書き込むことも可能なため、受け取った人もさっとメモを取りやすいでしょう。

文章だけでなく写真やイラストを用いた報告書であれば、コート紙やマットコート紙を用いましょう。特にマットコート紙を用いた報告書なら直接文章を書き込むことも可能です。

まとめ

印刷用紙と一言で言っても、コート紙、マットコート紙、上質紙など種類はさまざまです。特に特殊紙となると、さらに細分化されています。

数ある印刷用紙の中から1つを選ぶ際は、何のために使用するのか用途を考えましょう。例えば、名刺やカードであればコート紙やマットコート紙、書類や報告書であれば上質紙が適しています。

用途に加えて、どのような場面で使用するのかも考慮すべきポイントです。誕生日や結婚式、リピーターへのDMなど特別なときに使用するのであれば、特殊紙の使用もおすすめです。

さまざまな印刷用紙の特徴を押さえて、用途や場面にぴったりな一枚を選びましょう。

また、本記事とは異なりますが、環境に配慮した用紙もご検討されている方は下記記事も併せてご覧ください。

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