人にやさしく、地球にやさしく
私たちは世代を超えた伝わりやすい情報の提供や心躍る印刷文化の継承、さらに脱炭素や持続可能な社会をめざす環境経営により、誰もが生き生きと暮らせるWell-Beingな社会の実現に貢献します。
トップメッセージTop Message
研文社は創業以来、「すべてはお客さまのために」をスローガンに、印刷事業に取り組んでまいりました。しかしコロナ禍を機に、デジタル化とペーパーレス化が一層加速し、印刷業界は従来の価値観だけでは立ちゆかない時代を迎えています。さらに地球温暖化や高齢化社会などの社会的課題はますます深刻度を増し、多くの企業に待ったなしの対応が求められています。こうした中、お客さまの課題に加え、その背景にある社会全体の課題に応えるために何をしていくべきか。このような思いから既存の事業ポートフォリオを改めて見直し、最優先の重要課題=マテリアリティを策定しました。
これは環境や地域に貢献するESG経営を実践する「経営基盤領域」と、印刷コミュニケーションを通じて社会に貢献する「価値創造領域」からなり、伝わるデザインとデジタルによる美しく豊かな印刷表現、さらにDXを駆使して事業を展開してまいります。そこでめざすのは、研文社に係わる人々とよりよいエンゲージメントを構築し、それによって社会のサステナブルな発展に貢献すること。すべてのステークホルダーによりよい価値を提供し、誰もが暮らしやすい社会の実現をめざします。
代表取締役社長 網野勝彦
研文社のステークホルダーと、めざすエンゲージの姿

研文社のマテリアリティとSDGsの取り組みMateriality
CO₂排出による地球温暖化がもたらす、気候変動の激甚化。さらに、人口の3分の1が65歳以上という超高齢社会の到来…。環境問題や高齢社会への対応は、企業にとって先延ばしが許されない喫緊の課題となってきています。未来を持続可能なものにするために、どのような姿勢で社会課題に取り組み、どのような成果を出していくのか。また、関連するSDGs目標への具体策は…。こうした社会課題への対応に、私たちはサステナビリティ委員会を組織して検討を重ね、これまでに蓄積された資産や技術、事業ポートフォリオについてその強みを再検討。全社をあげて取り組むべき重要課題「マテリアリティ」を、以下のように特定しました。
価値創造領域
印刷を通じてエイジレス社会に貢献
Universal【普遍性】
万人にわかりやすいデザインで情報を正しく伝える
-
印刷物は年齢に限らず、誰もが見やすくわかりやすいものでなければなりません。私たちは、ユニバーサルデザインを応用したUCD(ユニバーサルコミュニケーションデザイン)の観点から、文字の大きさやデザイン、配色などに留意し、わかりやすく伝わりやすい印刷物やデジタルツールを提供しています。2017年からスタートしたこの活動は、2024年専門機関UCDA(一社ユニバーサルコミュニケーションデザイン協会)において評価され、「UCD制作優秀企業賞」ゴールド賞を受賞しています。 伝わるデザイン UCDについて詳しくはこちら
Culture【文化性】
美しく豊かな印刷表現で生活に楽しさと潤いを届ける
-
DOC(デジタルオンデマンドセンター)専属のデザイナーとオペレーターが、高精細・広色域のデジタル印刷やデジタル加飾の新たな表現を開発していきます。従来のデジタル印刷業務に加え、トレーディングカードやペーパークラフトなどB to Cの分野での受注に対応。私たちは外部のデザイナーと協力しながら、新市場の創出という枠を超えて印刷産業・印刷文化自体を変化・拡充させていきます。DOCについて詳しくはこちら
-
日本で初めてパントン・ヘキサクローム技術認定を受けた私たちは、従来の4色にオレンジとグリーンを加えた6色の美しい印刷表現が可能。さらに多色刷りの技術やデジタル印刷機を駆使して、美術展の図録やオリジナリティあふれる写真集などの高精細カラー印刷を手掛けていきます。
Sustainable【持続可能性】
持続可能な印刷の仕組みをDXを活用して実現する
-
受注から制作、印刷、配送までの指示がオンライン上でできるICT技術を活用したシステムで、「必要な時に、必要な人に、必要な数の印刷物を届ける」ことがより効率的にできるようになります。業務の無人化や在庫レスを実現し、印刷ビジネスのフローと印刷物の価値や意義を変えていきます。プリントDXについて詳しくはこちら
経営基盤領域
環境や地域へ貢献するESG経営を実践
Environment【環境】
環境に配慮した素材と技術でカーボンニュートラルをめざす
-
長年にわたる環境への取り組みが認められ、尼崎工場は、2023年に日本印刷産業連合会の「環境優良工場表彰 経済産業大臣賞」を受賞。2024年には、尼崎工場でCO₂排出量は1.5トン、用水使用量は9,600リットルを削減し、廃油、廃プラスチックなどの産業廃棄物は前年比54%に抑えることができました。
<尼崎工場の実績>
-
プレートリサイクルによる
CO₂排出削減1.535t
無処理プレートへの部分移行で
プレート1㎡あたり0.2kgの
CO₂排出削減を実現。 -
CO₂排出量ゼロ電気使用による
CO₂排出量削減469t
尼崎クリーンセンターの
廃棄物発電により発電された
CO₂排出量ゼロ電力を100%使用。
温室効果ガスの排出削減に貢献。 -
省エネルギー
70%
H-UV印刷方式の枚葉印刷機は
従来型に比べ使用電力を70%削減。
CO₂排出量や温暖化防止に貢献。 -
リサイクル率
92.8%
断裁くずなどの
廃棄物のリサイクル率を向上。
メモ用紙などに加工。 -
水道水の削減
9,600ℓ
湿し水循環ろ過装置の導入により
毎月の湿し水交換が不要。
年間の水道水の使用を削減。 -
廃液量の削減
1/8
刷版工程の廃液は駆動系の見直し、
サーマルプレートや現像廃液削減装置
などにより従来の1/8に削減。 -
産業廃棄物の削減
前年比54%
断裁くずなどの
廃油・廃液、廃インキ、廃プラスチックの排出量が2023年は2,162kg、
2024年は1,177kg、月平均で減少。 -
森林資源の保護
22.1%以上
適切な森林管理や持続可能な
方法で調達された木材から生まれた FSC認証用紙の使用率が向上。
森林資源の保全に貢献。 -
環境配慮型プリントの
受注件数増加535.3%
2024年のカーボンゼロプリントの
受注件数は164件、2023年は31件。
またカーボンニュートラルプリントの
受注件数は18件、2023年は3件。
環境配慮型プリントの総数で見ると、
増加率は535.3%。
また2022年12月、日本サステナブル印刷協会に加盟。カーボンゼロプリントおよびカーボンニュートラルプリントでの印刷物「環境配慮型プリント」の提供を本格化しています。環境配慮型プリントについて詳しくはこちら
-
-
SBTとは5~15年先を見据えて、参加企業それぞれが科学的根拠に基づく温室効果ガスの排出削減目標を設定する取り組みです。これに参加することにより、パリ協定に整合する持続可能な企業として評価されます。参加企業は世界で約1万社。しかもそのほとんどが大手企業という中、研文社は業界でもいち早く加盟し、排出量を2030年までに2020年比で42%に削減するという目標が承認されています。
-
企業や自治体、教育機関、医療機関等が電力を100%再生可能エネルギーに転換することにより、社会全体で再エネを利用していこうとする枠組みです。参加団体は遅くとも2050年までに使用電力を100%再エネに転換することを宣言し、進捗状況を毎年報告する義務を負います。研文社はすでに2023年に全工場で再エネ電力を利用しています。
-
日本印刷産業連合会が策定した「グリーンプリンティング・オフセット印刷部門(以下、GP)認定」は、地球環境への負荷を低減するための活動を行い、環境経営に積極的な印刷関連企業を認定するものです。尼崎工場は2021年に環境への一連の取り組みが評価されて認定されました。また、埼玉工場は2023年9月に、本社工場DOCも2024年10月に、GP認定を取得しています。
-
2021年からは尼崎市が行っている廃棄物発電によるCO₂ゼロ電力を購入しています。これにより尼崎工場で生産するすべての印刷物はゼロカーボン生産になっています。また埼玉工場、本社工場もCO₂ゼロ電力で稼働しており、研文社の全工場はZEFという名称で呼ぶことができます。
Social【社会】
印刷文化の担い手として地域社会や伝統文化に貢献する
-
新生児の胆道閉鎖症を早期発見するため、実際の便と見比べができる「新版便色カード」、幼児のアレルギー事故を防ぐため、母子手帳への掲載を想定しピクトでわかりやすくまとめた「アレルギー食品 離乳食管理表」、さらにコロナ禍での体調管理が記入できるとともに、ワクチンペーパーの使用で用紙代の一部を途上国の子どもにワクチンを贈る「すこやかノート」など、私たちは少子化や健康に対する社会課題にも応えてきました。
-
京都市立芸術大学美術学部での「印刷工学」の夏期集中講義や、尼崎市の中学生に対するSDGsの出張講座や夏休みの「オープンファクトリー」、さらに高校生向けのインターン研修など、私たちは印刷や環境保全を次世代に伝えるためにさまざまな活動を行っています。
-
フレキシブルな勤務形態や残業時間の短縮、各種休業規程等を設け、ワーク・ライフ・バランスの充実を目指しています。さらに健康診断や人間ドック、ストレスチェックなどにより、働く社員の心身の健康や安全を確保しています。さらに、シニア社員の活躍促進や、「JIUNI USINE(ジユーニ ユジーヌ)」というブランドでオリジナル文具のオンライン販売を実現した女性だけの商品開発チームなど、能力発揮の機会を用意しています。
-
全日本印刷工業組合連合会が創設した「全印工連CSR認定制度」は、印刷会社がCSR活動を推進しやすくするためのものです。私たちは2018年にワンスターの認証を受けていますが、さらにツースター、スリースターをめざしています。
Governance【ガバナンス】
健全な経営と組織で、従業員のWell-Beingを実現する
-
情報セキュリティに対するリスクは急速に高まっています。私たちも個人情報を扱う企業として細心の注意を持って扱っています。個人情報については、個人情報保護マネジメントシステムを構築・運用し、「プライバシーマーク」の認定に基づき、厳正な管理を行っています。また、情報セキュリティのインシデントに対応するCSIRT(Computer Security Incident Response Team)を2020年9月に結成。脆弱性情報の収集、サイバー攻撃・トラブルの監視などを行う他、情報セキュリティのインシデント対応に備えています。
-
自然災害や品質事故など事業継続に影響を与えるリスクをヘッジするため、さまざまなプランを策定し、緊急事態対応体制を整えています。その一つとして、私たちが加入している全国の中堅印刷企業14社により発足した共同体「EPC-JAPAN」では、万一の災害等で一社が事業継続のリスクに対峙しても、すぐに他の参画企業が事業補完に協力できるよう、事業継続対策(BCP)をマニュアル化して共有しています。
-
品質保証活動とは「企画→制作→製造→デリバリー」といった一貫した仕事の流れで、それぞれの品質保証責任者が品質を保証することにより、企業全体の品質が確実に実現されます。私たちは全社・全部門で行う「事故・クレームゼロ活動」や、カイゼンサークル活動、全拠点での「3S(整理・整頓・清掃)」など、日頃から品質保証に関する意識を向上させ、 製品の品質と安全な管理を行っています。
コーポレートメッセージとマテリアリティの関係
コーポレートメッセージ「人にやさしく 地球にやさしく」と、マテリアリティの関係は、以下の図のとおりです。

価値創造プロセスValue Creation Process
価値創造プロセスとは、企業が自社の資本をどのように活用して、長期的な価値を生み出し、社会やステークホルダーに貢献していくかを説明するフレームワークです。

活動報告Report
2024年12月「あましんグリーンプレミアム」環境活動部門賞を受賞
地元で環境改善に寄与する取り組みを行っている法人個人を対象とする尼崎信用金庫様主催のコンテスト「あましんグリーンプレミアム」に、研文社は「環境配慮型プリントでカーボンニュートラルの実現に貢献」というテーマで応募。「環境活動部門賞」を受賞しました。
2024年11月「UCD制作優秀企業賞」ゴールドを受賞
情報の伝わりやすさを推進するUCDの実践・普及において目覚ましい実績を挙げた企業を表彰する「UCDAアワード2024」。研文社は、UCDをよく理解し提案力・改善力のある制作会社を表彰する「UCD製作優秀企業賞」の最高位、ゴールドを唯一受賞しました。
2024年8月「リコーブラックラムズ東京」のイベントに参画
ラグビーリーグワンで活躍する「リコーブラックラムズ東京」が二子玉川で開催したファンイベント「ラムズの夏休み2024」に、研文社は缶バッジを用いた森林保全活動で参加。1回500円でオリジナル缶バッジを作成すると、そのお金が東南アジアでのマングローブ植林に使われ、森林保全によるCO₂の吸収量増加で温暖化緩和に貢献できます。
2024年8月京都市立芸術大学で「印刷工学」を授業
生産管理部の三浦芳裕次長が2024年、京都市立芸術大学美術学部の非常勤講師に就任し、8月、夏期集中講義で約80人の学生に「印刷工学」を授業しました。授業では15項目にわたるカリキュラムを、教室での座学、および研文社の工場見学で履修。聴講した学生からは、もっとモノつくりの話しが聞きたい、などと熱心な感想が寄せられました。
2024年8月「オープンファクトリー」に協力
尼崎商工会議所のメンバーとしても地元に貢献。2024年の夏休みには「オープンファクトリー」として見学希望者を公募して工場見学を実施。尼崎市の児童・学生が市内産業の魅力を知り、職業観や働く事への関心を育むお手伝いをしました。
写真左:環境学習発表会の様子/右:「尼崎の森」オブジェ
2024年8月尼崎市の環境学習イベントで発表
尼崎市の生涯学習拠点に幼稚園児や小中高校大学生、それにNPOのメンバーらが集まって環境学習の発表会が開かれました。「企業版 森の会議」に参加する16の企業・団体も、自社のリサイクル素材などを使ったワークショップ形式で参加。研文社は工場で分別された梱包ひもなどを拠出して、「尼崎の森」オブジェを来場者に作ってもらうアクティビティを提供。リサイクルの大切さと森を育てることの意義をアピールしました。
写真左:「尼崎21世紀の森」構想エリア/右:企業版森の会議チラシ
2024年5月「企業版 森の会議」に参加
研文社の主力工場がある尼崎市臨海地域では、100年かけて森を育て、水と緑と人の共生するまちづくりを目指す「尼崎21世紀の森」プロジェクトが進められています。地域の企業・団体は工場緑化や植樹などに各々で取り組んできましたが、2024年5月、それらの活動を「環境学習」をキーワードにつないでいこうと「企業版 森の会議」がスタート。さっそく研文社も参加して、環境学習発表会に向けて話し合いを行いました。
環境データの推移Data
尼崎工場の環境保全の取り組み
リサイクル率

産業廃棄物量

温室効果ガス削減量

研文社全拠点での電力量/CO₂量・ガス量/CO₂量の推移
電力量/CO₂量

ガス量/CO₂量
